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気晴らし細論

過去ログ

江戸川乱歩、B級パニック映画になる 『キラーソファ』


どうも、こんにちは。

話題作も多数公開されている中、世の中の潮流に完全に逆らってB級映画。



キラーソファ(2019)

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ダンサーのフランチェスカ(ピイミオ・メイ)は殺人事件の捜査をしている二人組の刑事から事情聴取を受け、切断された人の足の写真を見せられます。被害者と思われる人物はフランチェスカの元カレでしたが、破局後ストーカー化した元カレから身を隠すように生活していたフランチェスカは何も事情を知りません。そして同日、フランチェスカは呪われた曰く付きの古いソファを、そうと知らずに知人から譲り受けてしまいます。



世の中にはサメ系のパニック映画ばっかり観るマニアの方がいると聞きますが、最近その気持ちがわかるようになってきました。暗い映画も大好きだけどさ、アホくさいB級映画を観るのも楽しいよね。前回記事の「きみの瞳が問いかけている」のような作品はシリアスなラブストーリーと思って観るからちょっとしたアラが目立っていろいろツッコみたくなっちゃうけど、最初からゆるゆるな映画とわかってれば超えるべきハードルなどないに等しい。もはやスマホ片手に鼻ほじりながら眺めるくらいのノリ。

というわけで本作もB級パニック映画という肩書きに違わぬ適度なゆるさと若干の恐怖感で快調に進むわけですが、映画レビューサイトを覗くと5点満点中2.3とか目も当てられない低評価。あまりにも低い。低すぎる。確かに完成度は高くないけど、正直そんなにこき下ろすほどではないと思う。と、ここでふとある考えが私の頭によぎります。そしてその予感を裏付けるかのように、レビューサイトには「ソファが人を襲うというトンデモ設定!」「予測不可能な殺人ソファ」という文言が踊り狂う。


まてまて、もしかして、みんな、『人間椅子』というエログロホラーの傑作を知らんの?


ソファが人を襲うホラー映画だなんて、あらすじを読んだ時点で『人間椅子』かよって私はテンション上がったのに、『人間椅子』というワードは不自然なほどレビューの中に出てこない。嘘でしょ。『人間椅子』ってそんなに知名度低いの? 江戸川乱歩なのに? とか偉そうなこと言っておいて、私も江戸川乱歩の著作は友人に勧められた短編いくつかと『孤島の鬼』くらいしか読んだことないんですけれども、個人的には『人間椅子』が江戸川乱歩の最高傑作だと思ってるんで。やっぱり持つべきものは友だな。

さて、どう考えても物語の素地は人間椅子だと思うけどさ、そうでないならむしろ一体どんな設定なのか知りたいじゃん。答え合わせという意味でも観たさが余計に募るじゃん。そしていざ蓋を開けてみたら、ソファがまるで人格を持っているかのように動く。機敏に動く。フットレスト部分が足のように、肘置き部分が腕のように、ヘッドレスト部分が頭のように、およそホラー作品とは思えぬコミカルな動き。物理の法則を超えたオカルト映像。これぞB級の醍醐味。同時に、あれ、人間椅子じゃ、ない? と若干の不安を覚え始める。

※以下ネタバレあります。

登場人物がひとりまたひとりと順調にソファの餌食となりながら、物語は徐々に佳境に入ってまいります。フランチェスカの親友のマキシは祖父の営むアンティーク家具屋を手伝っており、祖父には除霊あるいは霊媒の心得がある様子。そんな祖父の協力で、どうやらソファには悪霊が取り憑いているらしいということが判明。悪霊を木箱に入れて燃やすことを計画します。

フランチェスカは木箱を持って恐る恐るソファに近づきますが、彼女自身は除霊師でも霊媒師でも何でもないのでソファから悪霊を分離させて箱に入れるなどという芸当は当然ながらスムーズに進みません。じれたフランチェスカは直接ソファに火を放とうと決意。ソファにガソリンを撒き、マッチを擦って前方にかざす。それをソファが息を吹きかけて消す。フランチェスカがマッチを擦って掲げてはソファが息を吹きかける。ひたすら繰り返される茶番。はよマッチ投げろや。擦ったら間髪入れずにすぐ投げろ。

時を同じくして、フランチェスカの元カレの事件の被疑者が取り調べを受けていました。その男は、協力はしたけど殺してないと言い張ります。足を切断したのも本人の意思で、頼まれてやったことだと必死にアピール。なぜ足を切断する必要があったのか問い詰める刑事としばし押し問答をしたのち、ようやく白状。

「どうせ信じない」
「言ってみろ」
「彼は収まろうとしてたんだ」
「何にだ?」
「ソファさ」


でしょうね。


むしろそうでなきゃ困るんだよ。そんなにもったいぶらなくてもわかってたよ。ていうか安心した。マキシのおじいちゃんが「悪霊は人間にしか取り憑かないはずなのに不思議だなあ」なんてつぶやいて、わかりやすすぎる下手くそな伏線を張ってはいたが、ようやく真相を聞けて安心した。マジでソファという無機物に魂が宿ってひとりでに動いてるとかじゃなくてよかった。だってメインポスターだと歯生えてっからね。デフォルメされすぎでしょ。



『人間椅子』を知らない方はこれを機にぜひ読んでみてください。ぶっちゃけ『キラーソファ』はどうでもいいから『人間椅子』のほうをチェックしてほしい。青空文庫でも読めますので。同じ江戸川乱歩作品なら『人でなしの恋』も耽美で大変よろしいよ。

リアリティを捨て去り、笑いを手に入れる 『きみの瞳が問いかけている』


どうも、こんにちは。

本日ご紹介する作品の予告をテレビで見た時、私はこう思いました。キックボクサーがこのふわふわパーマはちょっと違うだろ、こんなやついたらコーチに髪切れって絶対怒られるわ、と。思いはしたけど声に出さなかった。すると、隣にいた父は「ボクサーならもっと胸筋つけたほうがいい。貧相すぎる。リアリティがない」と言いました。父娘でリアリティの求め方が違った。



きみの瞳が問いかけている(2020)

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かつてキックボクサーとして将来を期待されていた篠崎塁(横浜流星)は、ある事件に関与したことからキックボクサーを辞め、日雇いのバイトで食いつなぐ生活を送っていました。そんなある日、人違いで話しかけられたのをきっかけに盲目の女性・柏木明香里(吉高由里子)と出会います。交通事故によって両親と視力を失いながら毎日明るく生きる彼女に塁は次第に心を開いていきます。韓国映画『ただ君だけ』(2011)のリメイク作品です。



泣けると巷で噂の本作ですが、私は元の韓国映画もまったく知らず、非常にフラットな気持ちで観て参りました。冒頭、横浜流星が横浜の野毛あたりで汗水垂らして働きながら「横濱屋」という印字の入ったトラックに乗るのを目撃した時点で確信した。これはネタ映画だな、と。申し訳ないが、泣くポイントなどひとつもなかった。『STAND BY ME ドラえもん2』(2020)のほうがよっぽど泣ける。おばあちゃんが登場したあたりからずっと鼻の奥が痛かった。

というわけで、号泣必至のラブストーリー『きみの瞳が問いかけている』の笑えるポイントをご紹介していきたいと思います。こんなバチ当たりなことをしているのはきっとこのブログだけでしょう。何事もオリジナリティが大事。以下、盛大にネタバレしておりますのでご注意ください。



二人の出会いからすでにツッコミ所は満載なんですけどね、明香里は足の匂いとか靴の匂いとかには敏感なのに、塁と管理人のおじさんの匂いは嗅ぎ分けられないんだねとか、声で年齢も大体わかるんじゃないのとか、そんなことまでツッコミ出したら回収しきれないので特におもしろかったところをピックアップします。

明香里が職場の上司に自宅までストーカーされて襲われてしまう場面、そこで取り出すのがなんと防犯ブザー! 外ならわかるが自宅で鳴らしたところで効果ある? せいぜいお隣さんに聞こえるくらいが関の山だし、お隣さんに聞こえたところで助けに来てくれるほど濃いご近所付き合いしてる? してないよね。一度もお隣さん登場しないもんね。そしてストーカー上司にうるさいから止めてくれと言われて素直に止めるものだから、これは笑うところなのだろうかと私は身構えた。するとそこへ鬼の形相で馳せ参じる塁。

なぜお前が来る。

防犯ブザーの音が外まで聞こえたのか、ちょうどそこに塁が通りかかったのか、いずれにしてもなんというタイミング。あまりにもご都合主義が過ぎる。もっとこう、例えば待ち合わせしてたのに来ないから心配になって家を訪ねてきたとか、直前まで一緒にいたんだけど忘れ物があったから届けにきたとか、家に来る自然な口実はどうとでもできるだろうに。それくらいのディテールはくれよ。きっとこの防犯ブザーはドラえもんの四次元ポケットから出した秘密道具なんだよね。塁にだけ届くSOSサインが出るんだよね。もうそう思い込むことにした。

また、自分の制止を聞かず、塁がストーカー上司をタコ殴りにしたもんだから、明香里は仕事をクビになるのではないかと心配して意気消沈します。あんなことされたのに仕事続けるの?の塁 VS 障害者が仕事見つけるのがどれだけ大変か知らないでしょの明香里で軽い言い合いになるわけですが、障害者にとって転職が簡単でないのもよくわかるし、明香里が心配だからあんなクソ上司から離れてほしいのもよくわかる。どちらの言い分もわかる。この時点では二人はまだ付き合ってないはずなのに塁が「俺が責任取るよ」なんて言い出すので、明香里が「もう帰って」と呆れる気持ちもわかる。しかし、だ。

明香里よ、お礼くらい言おうか。

間一髪のところを助けてもらったのだから、その後の塁の言動にちょっとイラついたとしても、ありがとうは言わねばならんだろ。人として。なんで言えないんだよ。助けてもらった直後の明香里の第一声「なんで私の言うこと聞いてくれないの?」だったからね。



では次に参ります。明香里が事故にあったそもそもの原因に自分が関わっていることがわかって、塁は激しく落ち込みます。また罪の意識から明香里に事実を言い出せず一人で抱え込むのですが、そんな折、明香里のかろうじて残っている視力が網膜剥離によって完全に失われるかもしれないことが発覚。手術をすれば視力は回復するんだけど、自分が運転していた車で事故を起こし両親を死なせてしまったことから、明香里は自分に罰を与えるような気持ちで手術を受けずにそのままでいたとのこと。

塁「なんで黙ってたの?」

いやお前がな。

隠してる内容の重さで言ったら塁のほうが上だぞ。もう洗いざらい全部話せって。手術を受けさせるべく「将来子供ができた時、子供の顔、見たくない?」と説得を試みるのもセコい。結局、塁は明香里には自分の罪を告白せず、手術費用捻出のために過去に手を出していた違法賭博の格闘試合に今一度舞い戻ります。せっかくキックボクサーとして再起をかけて練習に励んでたのに、全てをパーにするアホ。明香里には何も話さないくせにコーチには律儀に「違法賭博の試合に出ます」と言うアホ。そして見送るコーチもアホ。もっと全力で止めろ。ていうか手術で明香里の視力戻るのかよ。さっき転職のことで仲違いしてたのも無駄だったな。

試合の話を持ちかけてきた半グレのリーダー佐久間恭介(町田啓太)に、塁は「これで終わりにしてくれますか」とさも被害者のような口ぶりですが、最終的には金欲しさからその話に乗ったわけだし、一度足を洗った世界にまた足を突っ込むなんて自殺行為だよね。終わりにしてくれるわけがないじゃん。

そうして対戦相手として出てきたのはドレッドヘアのゴリマッチョの外国人。もうさすがに笑うしかない。誰なんだお前は。塁が勝てるわけない相手(塁の負け確の出来レース)としてのご登場なんだけど、そこまで強そうに見えない。体は二周りくらい大きいのに迫力ないし、試合シーンがめちゃくちゃ淡白で、ボクシング映画のそれを期待してると肩透かし食らいます。私は食らいました。試合のシーン、正味二分くらいだったでしょ。

そして試合のあと、塁の刺される場所もやばいよね。背中から腰のところを二回刺された。これは脊椎損傷パターンですね。二度と歩けなくなってしまう展開ですね。と思っていたら、二年後へ飛ぶ。またしてもご都合主義すぎるタイムスキップ。二年後もまだ入院生活&松葉杖があってやっと歩けるほどの大怪我ではあるが、歩けるのかよ。半グレのくせにツメが甘いな。というより基本的に全ての設定においてツメが甘い。



本作で唯一の見所は、塁を裏の世界に引きずり込む半グレのリーダー恭介役の町田啓太よ。とにかく顔がいい。チェリまほのスパダリ黒沢よりもこっちのほうが圧倒的にかっこいい。だってイケメンかマフィアしか着用を許されないタイプのサングラスが似合っちゃってますもん。

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この凄み。威圧感。声を荒げる場面は一度もなく、終始穏やかなしゃべり方。それでいて怖い。聞くところによると監督から金髪にしてほしいと指示があったところ、町田くんが黒髪の方がいいんじゃないかと提案して結果それが採用されたらしいのですが、黒で大正解。金髪じゃ軽薄さが出てしまう。この黒の短髪、それもまったく洒落っ気のないシンプルすぎる短髪によってどっしりとした重みが生まれている。

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黒の短髪しか勝たんってギャルみたいなこと言いたくなるくらいかっこいい。前髪とか結構短いから見ようによってはモンチッチになる恐れ大なのに、それがかっこいいってどういうことなの? 服装も黒のタンクトップに黒のジャケットというチャラとシックの間を行く絶妙なスタイル。ひとつだけ難点を挙げるならば、耳の後ろの十字架タトゥーはすごくいいのですが、胸の英字タトゥーだけはダサさがK点超えしてます。

リアル東洋スタイルのオークワフィナが好き 『フェアウェル』


どうも、こんにちは。

公開から少し時間が経ってしまいましたが、本日はこちらの作品です。



フェアウェル(2019)

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ニューヨークに暮らす中国移民のビリー(オークワフィナ)は祖母がガンで余命わずかと知り、久しぶりに中国へ帰郷します。中国の風習として両親や親戚たちは祖母本人には絶対に余命宣告してはいけないと主張しますが、その考え方に納得できないビリーは大好きな祖母と残された時間をどう過ごすか葛藤します。



本作は中国語セリフと英語セリフが6:4くらいで混ざり合うまさに私にぴったりのカオス仕様。主人公とその両親は中国からアメリカに移住して家族間でも日常会話が英語なのですが、おばあちゃんや親戚たちと話す時は中国語なので、二言語が常にごちゃまぜです。親戚一同で中国語しゃべってたかと思いきや、主人公とお父さんがいきなり英語で二言三言会話したりして、その間の取り方みたいなものにバイリンガル家庭のリアルネスさを感じた。

一般的に、劇中で複数の言語が使われる場合は字幕にも区別があって、メインの言語は普通の白字幕、もう一つの言語は字幕に括弧(あるいはダブルクォーテーションマーク)が付いてたり、字幕のフォントが違ったり色が違ったりするのですが、『フェアウェル』はなんにも区別がありません。途中、英語がわからない祖母の前であえて祖母にわからないように英語で会話するシーンとかは括弧付きの字幕でしたけど、他は全部一緒の普通の白字幕。

言語ごとに字幕を変えないっていうのはなかなか珍しい気がするのですが、私がちょっと前に観た『ファヒム パリが見た奇跡』(2019)も、フランス語、英語、ベンガル語(?)が全部ごちゃまぜで、しかも字幕には括弧が付いてたり付いてなかったり統一性が見られず、訳者は締め切りに追われて徹夜でやっつけたんかってくらいに雑な仕事っぷりをかましてたのでカオス度で言ったら『フェアウェル』の遥か上を行っておりました。

バイリンガルやトリリンガルであることは世界的に珍しくなくなってきてると思うので、それに伴なって一つの作品の中で一人のキャラクターが複数の言語を使う作品も増えてたりするのかもしれないよね。ただ字幕を区別しないことに関しては、いちいち区別してられないくらい会話の中に違う言語が入り混じってるせいなのか、単に訳者が諦めただけなのか、そもそも字幕を区別しないポリシーなのか、それはわからないけど。



さて、ここからは余談です。主人公ビリーを演じているオークワフィナは、つり目で丸顔。申し訳ないがアジアンビューティーとも言いがたいザ・東洋ビジュアルです。顔だけでなく背格好も東洋スケールなので正直カメラ映えはしない。でもそんな彼女が『オーシャンズ8』(2017)や『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019)などの人気作にも出演して近年知名度を上げてるのって、我々に勇気を与えてくれると思わん? 私は自他共に認める猫背なのですが、オークワフィナも結構猫背なので、なんかそれだけで親近感増すわ。

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そして私の目にはもうオークワフィナはムーランにしか見えない。

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コロナ禍でなんやかんやあって劇場公開されることなく配信での公開になってしまった実写版『ムーラン』(2020)では、実際にはリウ・イーフェイがムーランを演じておりますが、なんだか元のアニメより可憐で守ってあげたくなるヒロイン感が増している。きつね顔というよりはたぬき顔。たぬき顔の女の子はかわいいんだよ。キムタクのとこの次女Kokiっぽい雰囲気もある。

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ディズニー感はもれなく薄れるけれども、リアルを追求するならばムーラン役はオークワフィナに軍配が上がるでしょう。悪くないと思うんだけど、どうだろう。おもしろくなっちゃうからだめかな。

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タークスかと思ったらサイコキラーだったモネク 『Love Killa』


どうも、こんにちは。

本日の議題は11/2に3rdアルバム「FATAL LOVE」をリリースしたMONSTA Xについてです。まずタイトル曲「Love Killa」のティザー映像を見た第一印象。

なんか、タークスみたいだな。

ファイナルファンタジー7(FF7)に登場する神羅カンパニー総務部調査課、通称タークスは、揃いの黒スーツに身を包んで、諜報、誘拐、暗殺などの汚れ仕事を生業とし、しばしばヘリで登場する激強な人たちです。まあスーツとヘリコプターの音とタークスのテーマにほんの少し雰囲気が似てたってただそれだけなんですけれども。でさ、いざ蓋を開けてみたらアメリカ映画のオマージュ盛りだくさんじゃん。もうこれはフィーチャーするしかないでしょ。


オマージュ作品(とりあえず確実なもの)
ジュホン→『ダークナイト』(2008)
ミニョク→『アメリカン・サイコ』(2000)
ヒョンウォン→『ファイト・クラブ』(1999)
キヒョン→『羊たちの沈黙』(1990)

この4人に関してはすぐわかったし絶対に間違いない。このブログでも取り上げてる作品だもん。見逃すはずないっすよ。ではまずジュホン。

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この黄色いスクールバスで秒でわかった。黄色のスクールバス、今まで何度見たことか。テレビ番組とかで『ダークナイト』が取り上げられてる時に使われるのって大抵このバスが写り込んでるシーンだし、バスがほぼ主役級の『ダークナイト』の冒頭の映像って、『バットマン ビギンズ』(2005)におまけ映像でついてくるのよね。だから私は『バットマン ビギンズ』も『ダークナイト』も全編通しては2回くらいしか観てないけど、『ダークナイト』の冒頭に関してだけ言えば単純計算で2倍見てるのよね。



次にミニョク。

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スーツにレインコートで一面ビニール張りの部屋に佇むなんて『アメリカン・サイコ』しかありえない。他にそんなトンチキな組み合わせはお目にかかったことがない。石膏像に赤ペンキ(血)なんてところまでやらなくても充分です。もしサービス精神を発揮してくださるのなら、かの有名な名刺マウンティングという迷シーンを入れてくれてもよかったんですけれども。



続きましてヒョンウォン。

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赤い革ジャンと言ったら『ファイト・クラブ』のブラピ一択じゃん。しかもよく見たらシャツも似たようなやつ着てる。笑えるのは、ブラピが演じたタイラーはムキムキのマッチョだったけど、ヒョンウォンは他のメンバーが露出度高めの衣装着てても1人だけ肌見せゼロで「見せられない体なので」と自虐するほどガリガリなことよな。ちなみにBlock Bのピオがこのブラピに憧れて買ってはみたものの一度も着れずにいた赤ライダースをマブダチのWINNERのミノが着たらすごく似合ってしまって悲しそうな顔してたのを思い出しました。



そしてキヒョン。

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このケージは『羊たちの沈黙』の名物ですもの。体育館並みにどデカイ部屋の中にさらにケージがあるっていうあの謎の空間。キヒョンは物静かで一見無害そうなのに実は連続殺人鬼だったみたいな感じはあんまりないから、レクター博士のオマージュにしてはちょっと弱いな。物静かに見えて実は大阪の世話焼きおばちゃんだもん。



さて、問題はショヌとチャンギュンなのよ。この2人はマジでわからない。

チャンギュンは曲始まりのセリフから『ヘイトフル・エイト』(2015)説、車を運転してるシーンが主なことから『ドライヴ』(2011)説などが一応有力なようです。私は『ヘイトフル・エイト』は観てないからよくわからんけど、前述の4つの作品傾向からしてタランティーノはない気がするんですよね。シリアス作品揃えてるのにいきなりタランティーノ来るかな? 『ドライヴ』に関してもやっぱり前述の4作品でオマージュされてるキャラクターがそれぞれサイコキラーだったり、二重人格っぽかったりすることを考えるとちょっとそぐわない。私としましては『インディアン・ランナー』(1991)だったらめちゃめちゃテンション上がるのになって思っている次第です。

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主人公フランクの性格的にも、作品のジャンル的にも『インディアン・ランナー』は傾向が近い。またこれがチャンギュンっていうのがいろいろ勘ぐっちゃうな。彼、以前何かの折に「得意なことは孤独」って言ってたんですよ。そんなこと言われたらどうしたってフランクを重ねてしまう。でもMVの最後では車にジュホン乗せて一緒に逃げてるから、そういう点からすると『ドライヴ』の逃がし屋なのかなというのもわからなくはない。あとMVの中盤にカタカナのネオンが光ってる演出とかは『ブレードランナー』シリーズを彷彿とさせる感じもある。



最後にショヌさん。

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巷では『ジョン・ウィック』シリーズか、なんて言われていますが、正直みんな一番お手上げでしょ。あまりにも手がかりがなさすぎる。スーツ着て白い空間に立ってるサイコキラー? 全然思いつかん。何かわかったら追記したいと思いますが、たぶん追記することはない(白旗)。





幼少期にボストンで育ったため英語ペラペラなチャンギュン。聞くところによると、やはり彼の英語はボストン訛りが強めだそうです。私の耳はその訛りとやらを聞き取れるほど有能ではないわけですが、曲始まりの「Got room for one more」は、どうしても「ガッルーム フォウォンモー」と言っているように聞こえます。「ワンモア(ワンモー)」ではなく、「ウォンモー」である。これは訛りなのか、単に本人の言い方の問題なのか。疑問で眠れない。

アメリカ人の大好きなホイットマンとはいかに


どうも、こんにちは。

突然ですが、アメリカの映画によく出てくる詩人がいます。
その名はウォルト・ホイットマン。私の知る限りでも、『タクシードライバー』(1976)、『きみに読む物語』(2004)、『キル・ユア・ダーリン』(2013)に登場しました。そして前回記事で取り上げた『TENET』(2020)にも冒頭からブースト全開で登場。特殊部隊の「黄昏に生きる」「宵に友なし」という合言葉はホイットマンの詩から引用したものだとか。ホイットマンは押韻や韻律にとらわれない近代自由詩の創始者として知られ、アメリカでは大変有名で広く愛されている詩人だそうです。

私は以前からホイットマンって本当によく出てくるな、一体どんなやつよ、と思っていたわけですが、『TENET』にまで登場したらもうスルーはできまい。ということで、少々調べてみました。

ウィキペディア先生によりますと、

ウォルター・ホイットマン (Walter Whitman, 1819年5月31日 – 1892年3月26日) はアメリカ合衆国の詩人、随筆家、ジャーナリスト、ヒューマニスト。超越主義から写実主義への過渡期を代表する人物の一人で、作品には両方の様相が取り込まれている。アメリカ文学において最も影響力の大きい作家の一人でもあり、しばしば「自由詩の父」と呼ばれる。

とのことです。

ちなみに本名はウォルターだけど、欧米あるあるでお父さんの名前もウォルターなので家族間では「ウォルト」と呼ばれていたそう。その影響か、一般的に「ウォルト・ホイットマン」と表記されることが多いようです。

さて、ホイットマンには「自由詩の父」の他にも「アメリカ最初の民主主義詩人」という異名があります。私はアメリカ文学の知識がないのであくまでも想像ですが、1776年にアメリカの独立宣言があって、ホイットマンが1819年生まれということを考えると、アメリカという国ができてからアメリカの言葉でアメリカの精神を書いた最初期の詩人だから重要視されているということでしょう。

映画評論家の町山智浩さんによると、ホイットマンの詩は主に「俺は偉い! 俺はモテる! 俺は最高だ!」みたいな内容らしいので、なるほどアメリカ人が愛するわけだ(偏見の塊)。しかし「俺は最高だ!」という超アメリカ的なメッセージの一方で、どうやら反戦や平和主義といったこととも関連がありそうです。ホイットマンは南北戦争時代に陸軍病院で働いた経験もあったようですが、反戦を主張していたというような記述は私のしょぼいリサーチの限りでは見つかりませんでした。ただ、ホイットマン自身の存在や彼の著作が、その後ビートニクなどの反戦派の詩人たちに影響を与えていることを考えると、戦争反対!とは言わないまでも、戦争するよりうまい飯食おうぜ、くらいのことは言ってたんじゃないかなって思うんですけど、どう?

現に、先ほどご紹介したホイットマンの詩が登場する映画は、戦争映画ではないので戦場の描写はないものの、どれも戦時中の話です。『タクシードライバー』はベトナム戦争時代、『きみに読む物語』と『キル・ユア・ダーリン』は第二次世界大戦時代、そして『TENET』には第三次世界大戦を防がなければ、みたいなセリフがありました。なんだか、ホイットマンは自由主義のメタファー、反戦への遠まわしのメッセージとして使われているような気がしてくるわけです。

と、ここまで調べていてふと疑問に思ったことがあります。

ホイットマンはアメリカ人が大好きな詩人。しかし『TENET』の監督であるクリストファー・ノーランはアメリカとイギリスのハーフで、育ちはイギリス。子供の頃からアメリカにもよく訪れていたようではありますが、果たしてノーランはアメリカの自由主義精神を持っているのか? だって「俺は最高だ!」みたいな詩は、イギリス人は嫌いそうじゃない? ノーランは大学ではイギリス文学を専攻してたわけだし、どうにもホイットマンが好きとは思えないのですが。



最後に。ホイットマンの詩を日本で初めて紹介したのは夏目漱石と言われています。さすが漱石。一生ついていく。