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気晴らし細論

江戸川乱歩、B級パニック映画になる 『キラーソファ』


どうも、こんにちは。

話題作も多数公開されている中、世の中の潮流に完全に逆らってB級映画。



キラーソファ(2019)

killersofa.jpg

ダンサーのフランチェスカ(ピイミオ・メイ)は殺人事件の捜査をしている二人組の刑事から事情聴取を受け、切断された人の足の写真を見せられます。被害者と思われる人物はフランチェスカの元カレでしたが、破局後ストーカー化した元カレから身を隠すように生活していたフランチェスカは何も事情を知りません。そして同日、フランチェスカは呪われた曰く付きの古いソファを、そうと知らずに知人から譲り受けてしまいます。



世の中にはサメ系のパニック映画ばっかり観るマニアの方がいると聞きますが、最近その気持ちがわかるようになってきました。暗い映画も大好きだけどさ、アホくさいB級映画を観るのも楽しいよね。前回記事の「きみの瞳が問いかけている」のような作品はシリアスなラブストーリーと思って観るからちょっとしたアラが目立っていろいろツッコみたくなっちゃうけど、最初からゆるゆるな映画とわかってれば超えるべきハードルなどないに等しい。もはやスマホ片手に鼻ほじりながら眺めるくらいのノリ。

というわけで本作もB級パニック映画という肩書きに違わぬ適度なゆるさと若干の恐怖感で快調に進むわけですが、映画レビューサイトを覗くと5点満点中2.3とか目も当てられない低評価。あまりにも低い。低すぎる。確かに完成度は高くないけど、正直そんなにこき下ろすほどではないと思う。と、ここでふとある考えが私の頭によぎります。そしてその予感を裏付けるかのように、レビューサイトには「ソファが人を襲うというトンデモ設定!」「予測不可能な殺人ソファ」という文言が踊り狂う。


まてまて、もしかして、みんな、『人間椅子』というエログロホラーの傑作を知らんの?


ソファが人を襲うホラー映画だなんて、あらすじを読んだ時点で『人間椅子』かよって私はテンション上がったのに、『人間椅子』というワードは不自然なほどレビューの中に出てこない。嘘でしょ。『人間椅子』ってそんなに知名度低いの? 江戸川乱歩なのに? とか偉そうなこと言っておいて、私も江戸川乱歩の著作は友人に勧められた短編いくつかと『孤島の鬼』くらいしか読んだことないんですけれども、個人的には『人間椅子』が江戸川乱歩の最高傑作だと思ってるんで。やっぱり持つべきものは友だな。

さて、どう考えても物語の素地は人間椅子だと思うけどさ、そうでないならむしろ一体どんな設定なのか知りたいじゃん。答え合わせという意味でも観たさが余計に募るじゃん。そしていざ蓋を開けてみたら、ソファがまるで人格を持っているかのように動く。機敏に動く。フットレスト部分が足のように、肘置き部分が腕のように、ヘッドレスト部分が頭のように、およそホラー作品とは思えぬコミカルな動き。物理の法則を超えたオカルト映像。これぞB級の醍醐味。同時に、あれ、人間椅子じゃ、ない? と若干の不安を覚え始める。

※以下ネタバレあります。

登場人物がひとりまたひとりと順調にソファの餌食となりながら、物語は徐々に佳境に入ってまいります。フランチェスカの親友のマキシは祖父の営むアンティーク家具屋を手伝っており、祖父には除霊あるいは霊媒の心得がある様子。そんな祖父の協力で、どうやらソファには悪霊が取り憑いているらしいということが判明。悪霊を木箱に入れて燃やすことを計画します。

フランチェスカは木箱を持って恐る恐るソファに近づきますが、彼女自身は除霊師でも霊媒師でも何でもないのでソファから悪霊を分離させて箱に入れるなどという芸当は当然ながらスムーズに進みません。じれたフランチェスカは直接ソファに火を放とうと決意。ソファにガソリンを撒き、マッチを擦って前方にかざす。それをソファが息を吹きかけて消す。フランチェスカがマッチを擦って掲げてはソファが息を吹きかける。ひたすら繰り返される茶番。はよマッチ投げろや。擦ったら間髪入れずにすぐ投げろ。

時を同じくして、フランチェスカの元カレの事件の被疑者が取り調べを受けていました。その男は、協力はしたけど殺してないと言い張ります。足を切断したのも本人の意思で、頼まれてやったことだと必死にアピール。なぜ足を切断する必要があったのか問い詰める刑事としばし押し問答をしたのち、ようやく白状。

「どうせ信じない」
「言ってみろ」
「彼は収まろうとしてたんだ」
「何にだ?」
「ソファさ」


でしょうね。


むしろそうでなきゃ困るんだよ。そんなにもったいぶらなくてもわかってたよ。ていうか安心した。マキシのおじいちゃんが「悪霊は人間にしか取り憑かないはずなのに不思議だなあ」なんてつぶやいて、わかりやすすぎる下手くそな伏線を張ってはいたが、ようやく真相を聞けて安心した。マジでソファという無機物に魂が宿ってひとりでに動いてるとかじゃなくてよかった。だってメインポスターだと歯生えてっからね。デフォルメされすぎでしょ。



『人間椅子』を知らない方はこれを機にぜひ読んでみてください。ぶっちゃけ『キラーソファ』はどうでもいいから『人間椅子』のほうをチェックしてほしい。青空文庫でも読めますので。同じ江戸川乱歩作品なら『人でなしの恋』も耽美で大変よろしいよ。

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