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気晴らし細論

リアリティを捨て去り、笑いを手に入れる 『きみの瞳が問いかけている』


どうも、こんにちは。

本日ご紹介する作品の予告をテレビで見た時、私はこう思いました。キックボクサーがこのふわふわパーマはちょっと違うだろ、こんなやついたらコーチに髪切れって絶対怒られるわ、と。思いはしたけど声に出さなかった。すると、隣にいた父は「ボクサーならもっと胸筋つけたほうがいい。貧相すぎる。リアリティがない」と言いました。父娘でリアリティの求め方が違った。



きみの瞳が問いかけている(2020)

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かつてキックボクサーとして将来を期待されていた篠崎塁(横浜流星)は、ある事件に関与したことからキックボクサーを辞め、日雇いのバイトで食いつなぐ生活を送っていました。そんなある日、人違いで話しかけられたのをきっかけに盲目の女性・柏木明香里(吉高由里子)と出会います。交通事故によって両親と視力を失いながら毎日明るく生きる彼女に塁は次第に心を開いていきます。韓国映画『ただ君だけ』(2011)のリメイク作品です。



泣けると巷で噂の本作ですが、私は元の韓国映画もまったく知らず、非常にフラットな気持ちで観て参りました。冒頭、横浜流星が横浜の野毛あたりで汗水垂らして働きながら「横濱屋」という印字の入ったトラックに乗るのを目撃した時点で確信した。これはネタ映画だな、と。申し訳ないが、泣くポイントなどひとつもなかった。『STAND BY ME ドラえもん2』(2020)のほうがよっぽど泣ける。おばあちゃんが登場したあたりからずっと鼻の奥が痛かった。

というわけで、号泣必至のラブストーリー『きみの瞳が問いかけている』の笑えるポイントをご紹介していきたいと思います。こんなバチ当たりなことをしているのはきっとこのブログだけでしょう。何事もオリジナリティが大事。以下、盛大にネタバレしておりますのでご注意ください。



二人の出会いからすでにツッコミ所は満載なんですけどね、明香里は足の匂いとか靴の匂いとかには敏感なのに、塁と管理人のおじさんの匂いは嗅ぎ分けられないんだねとか、声で年齢も大体わかるんじゃないのとか、そんなことまでツッコミ出したら回収しきれないので特におもしろかったところをピックアップします。

明香里が職場の上司に自宅までストーカーされて襲われてしまう場面、そこで取り出すのがなんと防犯ブザー! 外ならわかるが自宅で鳴らしたところで効果ある? せいぜいお隣さんに聞こえるくらいが関の山だし、お隣さんに聞こえたところで助けに来てくれるほど濃いご近所付き合いしてる? してないよね。一度もお隣さん登場しないもんね。そしてストーカー上司にうるさいから止めてくれと言われて素直に止めるものだから、これは笑うところなのだろうかと私は身構えた。するとそこへ鬼の形相で馳せ参じる塁。

なぜお前が来る。

防犯ブザーの音が外まで聞こえたのか、ちょうどそこに塁が通りかかったのか、いずれにしてもなんというタイミング。あまりにもご都合主義が過ぎる。もっとこう、例えば待ち合わせしてたのに来ないから心配になって家を訪ねてきたとか、直前まで一緒にいたんだけど忘れ物があったから届けにきたとか、家に来る自然な口実はどうとでもできるだろうに。それくらいのディテールはくれよ。きっとこの防犯ブザーはドラえもんの四次元ポケットから出した秘密道具なんだよね。塁にだけ届くSOSサインが出るんだよね。もうそう思い込むことにした。

また、自分の制止を聞かず、塁がストーカー上司をタコ殴りにしたもんだから、明香里は仕事をクビになるのではないかと心配して意気消沈します。あんなことされたのに仕事続けるの?の塁 VS 障害者が仕事見つけるのがどれだけ大変か知らないでしょの明香里で軽い言い合いになるわけですが、障害者にとって転職が簡単でないのもよくわかるし、明香里が心配だからあんなクソ上司から離れてほしいのもよくわかる。どちらの言い分もわかる。この時点では二人はまだ付き合ってないはずなのに塁が「俺が責任取るよ」なんて言い出すので、明香里が「もう帰って」と呆れる気持ちもわかる。しかし、だ。

明香里よ、お礼くらい言おうか。

間一髪のところを助けてもらったのだから、その後の塁の言動にちょっとイラついたとしても、ありがとうは言わねばならんだろ。人として。なんで言えないんだよ。助けてもらった直後の明香里の第一声「なんで私の言うこと聞いてくれないの?」だったからね。



では次に参ります。明香里が事故にあったそもそもの原因に自分が関わっていることがわかって、塁は激しく落ち込みます。また罪の意識から明香里に事実を言い出せず一人で抱え込むのですが、そんな折、明香里のかろうじて残っている視力が網膜剥離によって完全に失われるかもしれないことが発覚。手術をすれば視力は回復するんだけど、自分が運転していた車で事故を起こし両親を死なせてしまったことから、明香里は自分に罰を与えるような気持ちで手術を受けずにそのままでいたとのこと。

塁「なんで黙ってたの?」

いやお前がな。

隠してる内容の重さで言ったら塁のほうが上だぞ。もう洗いざらい全部話せって。手術を受けさせるべく「将来子供ができた時、子供の顔、見たくない?」と説得を試みるのもセコい。結局、塁は明香里には自分の罪を告白せず、手術費用捻出のために過去に手を出していた違法賭博の格闘試合に今一度舞い戻ります。せっかくキックボクサーとして再起をかけて練習に励んでたのに、全てをパーにするアホ。明香里には何も話さないくせにコーチには律儀に「違法賭博の試合に出ます」と言うアホ。そして見送るコーチもアホ。もっと全力で止めろ。ていうか手術で明香里の視力戻るのかよ。さっき転職のことで仲違いしてたのも無駄だったな。

試合の話を持ちかけてきた半グレのリーダー佐久間恭介(町田啓太)に、塁は「これで終わりにしてくれますか」とさも被害者のような口ぶりですが、最終的には金欲しさからその話に乗ったわけだし、一度足を洗った世界にまた足を突っ込むなんて自殺行為だよね。終わりにしてくれるわけがないじゃん。

そうして対戦相手として出てきたのはドレッドヘアのゴリマッチョの外国人。もうさすがに笑うしかない。誰なんだお前は。塁が勝てるわけない相手(塁の負け確の出来レース)としてのご登場なんだけど、そこまで強そうに見えない。体は二周りくらい大きいのに迫力ないし、試合シーンがめちゃくちゃ淡白で、ボクシング映画のそれを期待してると肩透かし食らいます。私は食らいました。試合のシーン、正味二分くらいだったでしょ。

そして試合のあと、塁の刺される場所もやばいよね。背中から腰のところを二回刺された。これは脊椎損傷パターンですね。二度と歩けなくなってしまう展開ですね。と思っていたら、二年後へ飛ぶ。またしてもご都合主義すぎるタイムスキップ。二年後もまだ入院生活&松葉杖があってやっと歩けるほどの大怪我ではあるが、歩けるのかよ。半グレのくせにツメが甘いな。というより基本的に全ての設定においてツメが甘い。



本作で唯一の見所は、塁を裏の世界に引きずり込む半グレのリーダー恭介役の町田啓太よ。とにかく顔がいい。チェリまほのスパダリ黒沢よりもこっちのほうが圧倒的にかっこいい。だってイケメンかマフィアしか着用を許されないタイプのサングラスが似合っちゃってますもん。

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この凄み。威圧感。声を荒げる場面は一度もなく、終始穏やかなしゃべり方。それでいて怖い。聞くところによると監督から金髪にしてほしいと指示があったところ、町田くんが黒髪の方がいいんじゃないかと提案して結果それが採用されたらしいのですが、黒で大正解。金髪じゃ軽薄さが出てしまう。この黒の短髪、それもまったく洒落っ気のないシンプルすぎる短髪によってどっしりとした重みが生まれている。

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黒の短髪しか勝たんってギャルみたいなこと言いたくなるくらいかっこいい。前髪とか結構短いから見ようによってはモンチッチになる恐れ大なのに、それがかっこいいってどういうことなの? 服装も黒のタンクトップに黒のジャケットというチャラとシックの間を行く絶妙なスタイル。ひとつだけ難点を挙げるならば、耳の後ろの十字架タトゥーはすごくいいのですが、胸の英字タトゥーだけはダサさがK点超えしてます。

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