どうも、こんにちは。
ネット回線直ったよ〜! PCから更新できるようになったよ〜! というわけで、本日はこちら!
TENET(2020)
CIAエージェントの主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)はある任務への適正を買われ、極秘の研究所へ案内されます。そこで彼は壁の弾痕からハンドガンへ逆行する弾丸、未来から送られてきたという様々な物質を目の当たりにし、世界は何者かによる未来からの干渉を受けていることを聞かされます。彼に与えられた任務は未来からの干渉について調査することでした。
公開から一ヶ月以上経過していながらテネットのテの字も出さず、こいつ何してんねやと思われた方もいたでしょうか。一回観ただけではとても理解できないと聞いて、ノーラン作品だからグランドシネマに観に行きたいし(その理由はこちら→
"全編IMAXカメラで撮影" の落とし穴)、一度予習してからグランドシネマに行こうか、それともいきなりグランドシネマ行っちゃおうか、いろいろ考えてたら遅くなっちゃって、結局近場のIMAXで観てもう満足してしまいました。だって拍子抜けなほどストーリーは概ね理解できてしまった。
ただし、日本語話者にしか理解させる気のない『シン・ゴジラ』(2016)のように、『TENET』もまた英語話者にしか理解させる気がないという印象は受けた。アクションシーン以外ずっとしゃべってるし、ゆえに字幕切り替わるのが速くて追いきれないし、会話噛み合ってねえなみたいなところも多々あってさ、字幕付けるの苦労したろうなってありありとわかる。だからセリフの微妙なニュアンスや、キャラクターの表情、そういう細部に関してはきっと繰り返し観ないと理解できないので、何回も劇場に足を運びたくなるのはそういうことだろうなと思います。
あとノーランに関しては個人的にいつも思うけど、設定を複雑にしすぎなのよ。もっとシンプルでいいのよ。ロケも世界7都市で敢行したらしいですけど、会話してるところだけ切り取り切り取りで数秒ごとにカットが変わっちゃって、景色とかもう全然目に入らない。せっかくいろんな国に行ってるのに、ロケーションは海の上か建物の中かって感じなので、その土地の雰囲気を楽しませる気がない編集なのよ。世界7都市ロケ、必要あったか?
というわけで、『TENET』についての考察はすでに世界中の人が繰り広げていますから、今更そこに参戦しようなんておこがましいことはいたしません。私は例によって例のごとく浅い話をするだけです。冒頭の特殊部隊の戦闘服からもうたまんねえなって思ったし、カーアクションシーンは最高だったし、そこから主人公が初めて回転ドアを目の当たりにするくだりもわくわくした。だから作品鑑賞中は純粋に楽しめたんですけれども、終わってから冷静に反芻してたらだんだんイライラしてきちゃった。ノーランのクセがすごい。大クセ。以下、ネタバレありますのでご注意ください。
①自己犠牲の精神が好きすぎる誰かがやらなきゃいけないなら俺がやる。みたいなやつはハリウッドの大好物であり、ノーランの常套手段でもあります。『インターステラー』(2014)もそうだし、『ダークナイト』(2008)もそうだし、世界を救えるならたとえ自分の功績は日の目を浴びなくても、それどころか悪役扱いされたとしても、俺はやるぜって。本作の主人公もまた自己犠牲の精神を評価されて(テストをパスして)時間逆行の任務に突入するわけですけれども、主人公が命をかける理由がよくわからないのよね。この世界はそこまでして守る価値があるのか?
CIA仕込みのエージェントですから時に暗殺もするし、世界の救世主と言っても過言ではないのに最後には自分を黒幕と称する控えめな精神。まさにダークヒロイズムよね。でも正直言って彼はサイコパスです。大義のためには多少の犠牲も厭わない。オペラハウスの時もオスロ空港の時も主人公は一般人の安全を気にしてはいたけど、それでも結局あんなアホくさい作戦に乗っちゃうんだから、彼の「気にする」は所詮ポーズなのよ。あれだけデカイ爆発が起きたら怪我人が出るのは必至だろう。
ていうか、主人公以外もみんなサイコパス。だって、言うまでもなく、セイターはサイコパスじゃん。自分の目的のためには他者を蹴落とすファッキンネイチャーの持ち主でしょ。セイターがキャサリンを蹂躙しながら
「ファッキンネイチャー!!!!!(これが俺の本質だ)」って叫んでましたから、本人にも自覚ありです。ちなみに私はこのシーンを観た瞬間、あっこのセリフはツイッターでネタにされてるだろうな、って思ったんですよ。なのに観終わってツイート検索しても一切出てこない。なんで? みんな「ファッキンネイチャー」って言いたくならないの? 私がみんなとズレてんのかな?
また、そんなセイターに蹂躙されていたキャサリンも自分の自由と息子のために彼を殺すんですから立派なサイコパスです。しかも主人公たちの作戦が完了するまで殺すのを待てと言われたのに、それを待たずして殺す。咎められても「だってあのドヤ顔に我慢できなかったんだもん!」とまるで悪びれる様子がない。お前、セイター並みにやばいぞ。
あとはプリヤもだね。TENETの中の人は基本みんなサイコパスよね。70億人を救うためには、まあ百や二百の犠牲は仕方ないか的な。それは戦争の理論ぞ。
②アンチCG主義極力CGを使わず、リアルな撮影を信条とするノーラン。オスロ空港の爆発シーンではジャンボジェットを建物に突っ込ませ、時間逆行中のシーンはキャストに逆再生っぽい動きをさせる。リアリティを追求するのはいいと思う。下手くそなCGほど興ざめするものはないからね。でもさ、ノーランが全部リアルで撮る監督っていうのを知ってしまってから、彼の作品でジャンボジェットやら高級車やら爆発してるのを見るたび、「本物なのに……」って思うようになってしまった。もったいないという気持ちが大きすぎて、むしろ映像に集中できなくなってしまった。それって本末転倒じゃない? 爆発シーンはさ「わっほーい!」ってなりたいのが人情じゃん? 「うわ、今10万ドル爆発した……」なんて考えたくないじゃん。
それからすっごい不思議だったことがあります。クライマックスの戦闘シーンで後ろ向きに走ってるTENETの隊員たちがシュールすぎて吹き出しそうになったのに、劇場内見回しても誰も笑ってないの。なんでみんな笑わないの? あれはむしろ不自然だったぞ。何事にも用法と容量ってあるからね。ノーランのアンチCG主義は、添加物を極端に嫌う健康オタク、あるいは美容オタクに近いものがある。オーガニックだとかジビエだとか、ナチュラル志向も行きすぎるとうざったいだけじゃん。ファッキンネイチャー。
③放射能を軽視しすぎ時間逆行によって世界そのものが消滅してしまうということについて、「核より悲惨」というセリフがありました。お前そんなことがよく言えるな。また、核爆発により地図上から葬り去られた街で泥水をすするように過酷な少年期を生きたセイターをして、「放射能汚染を恐れない男」と称する。お前、そんなことがよく言えるな。そしてどうやら時間逆行そのものにも放射能の影響があるようで、未来から逆行して過去に持ち込まれた物質はどれも微量の放射能を帯びているらしい。なのに扱いが非常にずさん。喧嘩売ってんのか? お?
以前も言及したことがありますが、『ダークナイト ライジング』(2012)のラストでも核を海の上で爆発させてハッピーエンドみたいなくだりがあったり、ノーランは放射能をあまりにも軽視している。とにかくノーランは
『Fukushima 50』(2019)を観ろ。放射能汚染について語るのはそれからだ。
ノーランへのディスはこれくらいにしておいて、あとはキャストやキャラクターについて少々。
まず主人公のジョン・デヴィッド・ワシントンについて。『ブラック・クランズマン』(2018)を観た時はあんまり親父に似てないなって思ってたんだけど、声は親父にそっくりじゃん。それに気づけた。以上。
次にニール役のロバート・パティンソンについて。ニールは彼でこそだよね。
歩き方がシャラメ の記事でも申し上げましたように、敵なのか味方なのか、信用していいのかだめなのか、どちらに転んでも説得力がある貴重な俳優だもの。でも『TENET』では絶対味方だって私は公開前から予告の段階で確信してた。だって見た目が絶妙にダサいんだもん。よくわからんヘナヘナのネクタイしてたり、スーツもくたびれてる。髪もぐちゃぐちゃ。
そしてキャサリン役のエリザベス・デビッキについて。超長身のキャサリンに対して、大女だとか、女のくせにデカすぎるだとか、そういうセリフが一切なかったのは非常に評価できる。男の誰よりも身長の高い女がいても何も不思議を感じてない世界。まあそうよな。時間を逆行できる世界線にいるんだから、たかだか2mの女を見たくらいで大騒ぎするなんてちぐはぐなことするわけないよな。←
最後に。私としては『TENET』はさほど難解とは思いませんが、映画情報サイトに載ってるあらすじがどれも軒並み的外れなのを見るに、ライター含め本当に理解できてない人が多いのかなって。ギャグとかでなく。私は『インターステラー』で五次元の世界が出てきた時のほうが意味わかんなくてキレたけどね。
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