もはや再現VTRの映画を作る時代
どうも、こんにちは。
最近やたらと実話に基づいて作られた映画が多い気がするんですけども、私がたまたまそういうのばっかり観てるだけなのでしょうか。作り話より実話のほうが絶対的におもしろいんだから仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。そして実話だからこそ身も蓋もない終わり方したりする。今日はそんな作品を4つご紹介します。
ドント・ウォーリー(2018)

アルコール依存症のジョン(ホアキン・フェニックス)は交通事故によって胸から下に麻痺が残ってしまいます。車椅子生活を余儀なくされても依存症は治らないどころかますます悪化。しかし持ち前のブラックユーモアと絵の才能を生かして風刺漫画を書き始めると、徐々にその独特の世界観が人々に認められていきます。
主人公は今やジョーカー役で世界的スターのホアキン・フェニックスですが、注目すべきはそこじゃないんだ。主人公の恋人役として登場するのがあのルーニー・マーラなんだ。ルーニー・マーラが珍しく善良な女性なんだよ(なぜ珍しくなのかはこちらを参照ください→ルーニー・マーラに潜む狂気性について)。
あのルーニー・マーラがだよ、アル中&障害者の中年男を恋人にすることに何のためらいもない菩薩のような懐の広い女性。登場した瞬間から「あっこの人はいい人だ」って全幅の信頼が置けるやさしい表情と話し方の女性。でもさー、最終的には主人公のことゴミみたいに捨てるんじゃないの? なんて疑う隙を与えないほど慈愛に満ち満ちている。これは事件だろ。あ、ちなみにホアキン・フェニックスとルーニー・マーラはプライベートでもパートナーです。
この作品はエンドロールに本人の写真が出てくるというよくあるパターンです(おい)。
オンリー・ザ・ブレイブ(2017)

堕落した生活を送っていたブレンダン(マイルズ・テラー)は、娘ができたことをきっかけに人生をやり直そうと地元の山火事専門の消防隊 "グラニット・マウンテン・ホットショット" に入隊します。過酷な訓練に耐え、日々危険と隣り合わせの仕事を仲間とともに乗り越えて成長していくブレンダンに、過去にも類を見ない巨大山火事が襲いかかります。
これはな、ラストが重すぎるんじゃ。
当時日本でも話題になったようだし、ググればすぐにわかることなので言ってしまいますが、2013年にアリゾナ州で起きたヤーネルヒル火災は、最悪の気象条件が重なって火の手が瞬く間に拡大し、出動していたグラニット・マウンテン・ホットショットの隊員20名のうち19名が亡くなるという壮絶な結果に終わります。全滅するより1人生き残るほうが絶対つらいんだって。
この作品もエンドロールに本人たちの写真が登場しますが、その直前に19名は亡くなってるわけですので遺影さながらでマジつらい。いくら実話といっても、もっと救いのある終わり方してくれないと胃もたれがやばい。
アメリカン・アニマルズ(2018)

退屈な大学生活に飽き飽きしたスペンサー(バリー・コーガン)とウォーレン(エヴァン・ピーターズ)は、大学の図書館に時価1200万ドルの画集が保管されていることを知り、様々な犯罪映画を参考に画集を盗み出す計画を立て始めます。
作品は若手俳優たちが演じるパートの他に、事件を起こした張本人たちの口から語られるインタビューパートもあって、他ではあまり見ない構成になっています。作品の最後には本人たちの現在の様子がナレーションベースで紹介されるのですが、私が一番興奮したのはスペンサー本人の現在です。
彼らが盗み出そうとした画集はジョン・ジェームズ・オーデュボン著の「アメリカの鳥類」というもので、結論を言ってしまうと持ち出すのは失敗します。そして現在スペンサーは画家になり、鳥の絵を専門に描いているそう。もう画集に完全に囚われてるじゃん。芸術家だけが背負う呪いって感じで、うおー!ってなった。申し訳ないけど。
あとね、彼らはポンコツのくせに一丁前にコードネームを決めたりするのですが、これに色の名前を用いるのはクエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』(1992)の引用です。ピンクを嫌がるくだりとか笑ってしまった。スティーブ・ブシェミもめちゃくちゃ嫌がってたもんね。
15時17分、パリ行き(2018)

小学生からの幼馴染みであるアンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーンの3人が旅行中に体験したテロ犯との遭遇を映画化した作品です。彼らの生い立ちから事件発生までの半生を描く構成なのですが、なんと3人とも素人の本人自ら演じています。
世界のクリント・イーストウッドは毎度安心安定のクオリティでさすがですという感じですけれども、あのお歳になっても新しいことに挑戦する心意気がすごい。ド素人を本人役で主人公に据えて映画撮るなんて誰が思いつくよ。仮に思いついたとして誰が実行に移すよ。イーストウッドだよ。
テロ犯に遭遇する緊迫の場面は3人だけでなく周りのキャストもできる限り本人を集めたそうで、ある意味再現VTRと化しています。ドキュメンタリーのようでドキュメンタリーじゃない。フィクションのようでフィクションじゃない。なんか両方のいいとこ取りしたハイブリッドジャンル。
本人役で役作りが全く不要だからか知らんけど主人公3人は素人とは思えない堂々とした演技で、特にアンソニー・サドラーは前に見たことあると錯覚するくらい俳優顔だった。絶対他の作品出てたでしょ。マイケル・B・ジョーダンの次はアンソニー・サドラーでしょ。
ちなみにアレクの子供時代を演じるブライス・ガイザーくんは幼いながらもうお顔が出来上がってるのでこれからの成長に注目です。『ワンダー 君は太陽』(2017)にもちょっと意地悪な同級生役で出てて、すでにそういう鼻につく演技もできちゃってるので非常に有望株。
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