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気晴らし細論

2018年12月の記事

2018年 暮れのごあいさつ


今年は時間があるのをいいことに新旧問わず映画を観漁りました。結果たくさんのいい映画に出会い、今年のベストテンなるものを決めるのが不可能なほどお気に入りが増えました。

そこで最近とみに思うのは、ある人にとっては生涯何度も繰り返して観たくなる映画でも、ある人にとっては最後まで観るのもつらいほどつまらない場合が結構ある、ということです。もちろんこれは映画に限らず、音楽でも小説でも絵画でもありうることですけれども、私は最近なんだか映画を観ていて切にそれを感じます。

絶賛する人が多くて酷評する人が少なければ、当然文句なしで傑作と言える。しかし、たとえ万人にウケなくても、特定の個人に刺さったら、それはもうその人にとっては確実に傑作なわけです。「主人公が〇〇するシーンで、つい感情移入して泣いてしまった」と言う人に対して、「でもあの直前のシーンで主人公は〇〇してるんだから、あれは展開的におかしいよ」なんて他人が言うのは野暮なわけです。

本棚を見ればその人がわかる、とよく言われますが、そこまでしなくても好きな映画ベスト5くらい挙げてもらえれば大体どんな人かわかる気がするし、飲み屋で議題にあげてはいけない三大アンタッチャブルトピックとして、野球、政治、宗教がありますが、個人的には映画の話題も実は地雷を踏む危険性が高いのではないかと思っています。

つまり何が言いたいかというと、映画を観れば観るほど、人と面と向かって映画の話をするのが恥ずかしくなってきた、という話です。

どうぞ来年もよろしくお願いいたします。


2018年12月31日  せみ

「メットガラ」にテンションが上がるか否か、それが楽しめるかどうかの分かれ道 『オーシャンズ8』


どうも、こんにちは。

本日は『オーシャンズ』シリーズの最新作を取り上げます。恥ずかしながら、実は本シリーズの作品をひとつも観たことないのですが、話題作なのでミーハー根性で食いついてみました。



オーシャンズ8(2018)

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ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)の妹デビー(サンドラ・ブロック)は、兄に負けず劣らずの腕を持った泥棒。仮出所するなり、服役中に練りに練った強盗計画を実行するため、仲間集めを始めます。デビーの強盗計画とは、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されるファッションの祭典メットガラにて、大人気女優ダフネ(アン・ハサウェイ)が身につける1億5000万円のネックレスを盗み出すというものでした。


簡単に言うと、男だけだったこれまでの『オーシャンズ』に対し、今回は女だけの『オーシャンズ』チーム。予告やその他の宣伝でも「女だけ」という点を強調して推してますね。レンタルしてきて、先に観ていた父におもしろかったかと尋ねたところ「ん〜そこそこ」と、なんともパッとしない感想が返ってきました。だからあまり期待せずに観た。


うん、すごくおもしろいぞ。


だって、強盗の舞台がメットガラって!


メットガラって!


とてもタイムリーなことに、ちょうど今年、私は知ったんですよ。メットガラというセレブのお祭りを。今年のメットガラは「カトリック」がテーマということで、神々しくもパンチの効いたドレス、コーディネイトの数々が披露されていました。

例えば、ゼンデイヤのジャンヌ・ダルク風ドレス、アンバー・ハードの結束バンド(!)でできた後光風カチューシャ、カーラ・デルヴィーニュの綺麗なお顔が隠れてしまっているのれん付きヘアバンド、なんか草みたいなもの被ってるやはり顔の見えないフランシス・マクドーマンド、美川憲一や小林幸子にも張り合えそうな大翼を背負ったケイティ・ペリー、男性陣ではチャドウィック・ボーズマンの両胸に十字架をあしらった白スーツなんか粋でしたね。

そんな庶民には到底理解できないハイパーセレブリティパーティに潜入し、ハイパー高価なダイヤモンドのネックレスを盗み出すとは、なんという夢の世界。ジバンシイ、プラダ、ドルガバ、ヴァレンティノ、その他にも名のあるブランドやデザイナーの衣装がずらり。さらには芸能人やらアスリートやら本物のセレブたちがカメオ出演しています。しかもね、映画の中では潜入という体のオーシャンズチームのみなさん、中の人は現実にメットガラに出席してるんだよ? ジーザス。

舞台や衣装が華麗なのは前述の通りで、同様に肝心の強盗計画も華麗だし、オチは目新しさはないけど華麗ではあったし、何と言ってもやっぱりキャストが豪華ですね。サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム=カーター、この4人が揃うなんて強いでしょ。サンドラ以外も主役級じゃん。

特に主人公デビーとその相棒ルー(ケイト・ブランシェット)の関係性が非常によくてね、ツーカーの仲がたまらない。でもデビーの計画があまりにも壮大で、ルーは最初乗り気じゃないんですね。そういうわけで尻込みしているルーを朝食か昼食かを共にしながらデビーが口説き落とすわけなのですが、ここのシーンは要注目ポイントです。特にデビーがルーにあーんしてあげるところ、とってもアダルティ〜。

ケイト様はいつもどんな役でも男前だけど、本作では衣装も男前でした。スタジャン着てたり、脚にぴったり沿うレザーのパンツ着てたり、スリーピースのセットアップ着てたり(しかもタイまでしてる)、それなのに髪はプラチナブロンドの長めのボブ〜〜〜〜〜〜〜〜! かなり濃いアイメイク〜〜〜〜〜〜〜〜! そして重厚な美声〜〜〜〜〜〜〜〜! メイキングでは男性の監督(結構いい歳したおっさん)までもが「ケイトが出演してくれて最高だよ!もう本当にかっこよくて……」とうっとり顔。

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それから、このサンディ(171cm)とケイト様(174cm)という二大巨頭に挟まれるヘレナ(157cm)のかわいさが大爆発してた。ヘレナがこんなにかわいい作品は観たことないね。大抵は目の周り黒く囲ってる頭のおかしい女の役だから(8割くらいハリー・ポッターとティム・バートンのせい)。そんなヘレナが演じるのは、かつては人気を博してたのに今やデザインが時代遅れだと酷評されて自信をなくしているデザイナーのローズ。盗みや詐欺とは無縁に生きてきたローズが、デビーとルーの口車に乗せられてあれよあれよという間にチームに参加することになって戸惑う姿がめちゃかわ。

強盗の計画上、ダフネがメットガラで着るドレスは、何としてもローズがデザインしなければならない。ということで緊張に震えながらローズがダフネと交渉するシーンでは、窓の外からサングラスをかけてこっそり監視してるデビー&ルー。よくわからないけどシャボン玉飛ばしたりしてるのもかわいい。

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さて、舞台裏を語るメイキング映像で最もキレキレの仕上がりだったのが、強盗チームの一員であるタミー役のサラ・ポールソン。すごく真剣な顔で、冗談なのか何なのかよくわからないことを言いまくります。

「出演を決めてからの目標は、リアーナが通うクラブを知ること。それだけを考えてた」※

「キャストには本当に恵まれた。みんな仲がよかったの。これはサンディに言わされてるんだけど」

「でも嫌な人が誰もいなかった。あ、1人いたけど誰かは内緒」


サラ・ポールソンは、あっこの映画にも出てたんだ!って後で気づく感じのカメレオン女優です。つまりジョエル・エドガートンと同タイプ。

※リアーナも強盗チームのメンバーであるナインボール役で本作に出演

いろんな人に薦めたけどみんなチェックしてくれないので『アシガール』の魅力を大解説スペシャル


どうも、こんにちは。

本日は私がここ数年の中で一番ハマっているドラマをご紹介いたします。この一年間、会う人会う人に薦めてきたのにみんな全然観てくれないのでグレそう。しかし24日のクリスマスイブに続編のスペシャルドラマが放送予定ゆえ、今紹介しないわけにはゆかぬ。


アシガール

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足が速いことだけが取り柄の普通の女子高生・速川唯(黒島結菜)は、弟の尊(下田翔大)が発明したタイムマシンの起動スイッチを誤って押してしまい、戦国時代へタイムスリップします。途方に暮れる唯でしたが、戦国大名羽木家の跡取りである若君・忠清(伊藤健太郎)と出会い、うっかり一目惚れ。唯は足軽の唯之助と身分を偽り、自慢の脚力を頼りに若君を守らんと荒れ野を奔走します。


『ごくせん』や『デカワンコ』で有名な森本梢子の同名漫画が原作で、2017年にNHKで連続ドラマ化された本作、ただのラブコメとあなどるなかれ。話がよくできている。その魅力を4つにまとめてみました。



その①過去を変えてはいけないなんて知らん

まず何がいいかと言うと、タイムスリップものには必ずついて回る「過去を変えてはいけない」という不文律を思い切りスルーしてるところな。タイムスリップものはもはや飽和状態で頭打ちの感がありますからね。それならいっそ細かいことは一切気にせずに行こうという潔さがいい方向に働いていると思います。そもそもタイムスリップなんてSFだから、できるわけないんだから、あり。

原作では、唯が初めてスリップした時、高校の制服のブレザーを戦国に置いてきてますからね。あとたぶん便所サンダルも。ドラマではブレザーは戦国に持って行ってないけど、便所サンダルはやはり置いてきてると思う。平成の技術を450年前に置いてきてるわけです。



その②唯が非常にたくましい

一度目のタイムスリップは唯にとってはハプニングだったので、命からがら帰ってくると、もう戦国なんてこりごりだ、平成サイコー!となります。これは当然といえば当然の反応でしょう。しかし若君のおわす羽木家というのは唯の暮らす地元にかつて実在した大名。平成の世にも城跡が残っており、唯は自分がタイムスリップした永禄2年(1559年)に羽木家が滅亡してしまうということを知り、現実に会ったばかりなのにもう死んじゃうなんて嫌だ!と一念発起します。

このように、唯は後先考えないで突っ走るという少女漫画の主人公には欠かせない資質を備えた女の子なのですが、しかしただのバカではない。二度目の戦国旅に備え、まずは戦国の基本を知るべし、ということで資料を読んで勉強。いざという時のために食べられるものを知るべし、ということで野草について勉強。あわやという時は若君を抱えて逃げるべし、ということで筋トレ。戦国の道は平坦にあらず、ということで走り込み。

いざ戦国の世へ行くと、羽木家の家老である天野家のご隠居(若君の守役も務めたなかなかユニークなじじい)に取り入り、少しずつ、しかし確実に出世していきます。足軽百姓からスタートし、戦の時の荷物運びをする小荷駄組、若君の馬を世話するお馬番、ついには若君の警護役、と若君に近いところへ取り立てられていくのは見ていて胸が熱くなってしまう。なんと涙ぐましい努力。



その③会えない時間が愛育てるのさ

まずはタイムマシンの設定の妙ですね。タイムスリップは満月の夜に片道(現代から戦国へ、もしくは戦国から現代へ)一回だけ。かつ一人だけ。瀕死の傷を負った若君を助けるために若君を現代に送った結果、唯は戦国で一人待たなければいけなくなったり、タイムマシンの燃料が尽きてしまってしばらく行き来ができなくなったり、かなりままならない(ちなみに漫画は現在も連載中で、最近はこのタイムマシンがアップグレードしているらしい。私は9巻までしか読んでないから早く読みたい)。

このあたりの設定は言及するとあまりにも長くなってしまうので、ぜひとも漫画とドラマにて確認していただきたいのですが、まあ、早い話が、会えない時間が愛育てるのさ戦法なのです。前述したように、唯は若君と会えない時間も有効活用するし、若君は平成で傷を癒している間にこれから自分や羽木家がたどる運命を知り、その運命を変えるために自分が何をすべきかを考えます。

そこに加えて、唯はいつ死ぬかもわからない戦乱の世を駆ける足軽。若君を生かすために東奔西走。若君もまた命を救われたことで唯の正体を知り、思いを寄せるようになるのですが、そうなると当然唯を危険な目に合わせたくない。この辺りの押し問答はベタだけどやっぱり命かかってるからぐっとくる。

「もう会えないかもしれないって何度思いながら別れなきゃいけないんだろう」

唯のこのモノローグがとっても切ないのよ。



その④若君が男前

最後にして最大のポイントです。なんといってもアシガールの魅力は、若君のクールで凛々しい言動でしょう。

例えば、若君は唯(唯之助)が女であることに実はわりと早い段階から気づいています。というのも、唯は一度戦さ場で、若君の寝屋のお相手として差し出された領主の娘になり代わって、姫の格好をして若君と対面しているのです。若君はたぶんこの時すでに唯の歯に衣着せぬ物言いが気に入っていたと思われる。

さて、勢いで突入したものの、布団に枕が二つ置かれているのを目撃して一気に怖気付く唯に対し、「そのように怯えているおなごに何もせぬわ」と平成の世でもそう言える男がどれだけいるか、というスーパー男前発言をする若君。もうこれだけで若君の人柄にやられてしまうわけなのですが、この後しばし唯と談笑し、「笑うたら眠くなった。わしはもう寝る。お前も来るか?」とわりとすぐ急かすし、「腹が決まったら参れ」と言い残して寝所へ行ってしまう。

テクニックすごくない? 若君は弱冠18歳だけど、戦国の世では立派な成人男性なのでね。唯は結局腹が決まらずにそそくさと逃げますが、後日、お馬番の唯之助として若君と遠乗りという名のデートをした後、若君はまたしても次の一言を言い残して去ります。

「まだ腹は決まらぬか?」

唯はこれを思い出しては「やだ〜もう若君ったら、涼しい顔しちゃって〜」とでれでれ。漫画の読者も、テレビの前の視聴者も、おそらくでれでれ。私もでれでれ。 しかし一個気づいてしまった。これ、若君の周りの人間は唯が男だと完璧に信じ込んでいるので、はたから見れば若君(18)が唯之助(16)をたらしこんでいるという構図になるのではないか……。戦国武将にとって男色は嗜みだから、さもありなん。

そしてドラマ版の勝因は、やっぱり若君役に伊藤健太郎を抜擢したことじゃないですかね。「今日から俺は!」のツンツン頭の伊藤役で一気に知名度の上がった伊藤くん(ややこしいなおい)の若君役、超ハマってっから。

漫画の若君は見目麗しいお顔立ちで、中性的でやさしげな美男子。つまりいかにもな少女漫画顔。 原作ファンには「若君はこの子じゃない!」なんて言われていたようですが、まあこれは実写化作品には避けられないやつです。私はむしろ伊藤健太郎を起用したことで、より戦国の若君らしい説得力が出たと思います。ドラマ版は、美男子というよりはきりっと男前で、力強く、頼り甲斐のある若君になっています。『もののけ姫』(1997)大好き芸人の私は、とりあえずアシタカを健太郎若君に置き換える妄想をした。



唯と若君のことしか言及していませんが、周りのキャラクターも曲者ぞろいというか、魅力たっぷりなんですよ。先述した天野のじい、若君の兄の成之、戦国の世で母親代わりとして唯を支えてくれるおふくろ様。ドラマでもさすがNHKなだけあって、有名俳優陣が脇を固めています。羽木家の宿敵である高山家の親子を村田雄浩と加藤諒がやってるのとか特に最高。

とても私的な2018年KPOPベスト5


どうも、こんにちは。

年の瀬も間近に迫っているということで、本日は自分のための備忘録も兼ねて2018年リリースのKPOP楽曲ベスト5を記しておきたいと思います。KPOPは供給過多の傾向があるし、私の守備範囲が狭いのも相まって、かなり偏った選曲になっております。だってほら、このブログは基本浅いから。

では順不同で参ります。




NCT U - Baby Don't Stop


今年は年明け早々から非常に活発に活動していたNCTさん。3人の新メンバーが加入し、UもDREAMもイリチルも複数の曲を出し、イリチルはアメリカデビューまでし、ジェミンが帰ってきたかと思えばマークがDREAMを卒業することになり、慌ただしい1年でした。楽曲はどれも文句なしで良曲揃いの印象ですが、個人的にはこれが一番好きです。

NCTのメンバー入れ替え制度にはちょっとどうなんだろうかと思うところはあります。でもこんな風にテンとテヨンというダンスの得意な2人でユニットを組んだりされると「こういうのも狙いのひとつか……」とぐうの音も出なくなってしまう。しかもいかにもダンス曲じゃなく、NCTらしいネオカルチャーおしゃれ曲でさらっと躍らせるのがね、大正解。JPOPではあまりない類の曲調なので、こういう曲が出てくると、わかってるじゃん、これよこれ、となります。この2人のユニット活動がもっと見たいです。

歌詞に「Stop Baby don’t stop」というフレーズが頻出しているため、NCTメンバーのルーカスが「ストップなのかストップじゃないのかどっち!?」という趣旨のことを言っていましたが、ルーカス君、要するにそうやって相手を翻弄する曲なんだよ。




Hyolyn - Dally


KPOPは洋楽にかなり近いと私は思っていますが、これはもうゴリゴリの洋楽。フィーチャリングで参加しているラッパーGRAYもいい仕事している。渡辺直美が和製ビヨンセなら、韓国はヒョリンよ。衣装なんかも結構攻めてますけれども、完璧に日サロ行ってるでしょという黒さと細すぎない健康的なスタイルによって、印象としてはセクシーよりも強さのほうが前に出てます。こんなんもうアマゾネスやん。ワカンダフォーエバー。

MVもめちゃくちゃかっこいいけど、イベントなどのステージで歌っているのとか見るともう本当に、一生ついていきます、という感じです。歌よりもダンスメインのこういった曲ではヒョリンの良さが出ないなんて意見もあるようですが、「Dally」はむしろヒョリンだからこそやれる曲でしょう。韓国でこれができるのはヒョリンだけだ。と言おうと思ったけど、MAMAMOOのファサもできそう。




Red Velvet - Bad Boy


11月にこれのアンサーソング的な「RBB(Really Bad Boy)」というのもリリースされましたが、私は断然「Bad Boy」派です。こういった静かでメロウな曲調のR&Bは、SMEの真骨頂だと私は思っています。ユ・ヨンジン、ユ・ハンジンが作ってきた東方神起の「Tonight」(2005)、「Hey! Girl」(2006)、「Before U Go」(2011)や、Super Juniorの「Sorry Sorry Answer」(2009)から続く系譜じゃないかな。サビのユニゾンなんか、まさにそれ。

最近で言えば、NCT Uの「第7感」(2016)を聴いた時にSMEが本領発揮してきたな……と思ったけど、ついにガールズグループでもやってきたから私はもう諸手をあげて降参です。タイトルはバッドボーイなのに、歌詞の内容はバッドガールなのが最高。2月7日のショーチャンピオンのアイリーン嬢は神ってます。

「あんまり簡単に落ちないでね つまらないじゃない」




SEVENTEEN - A-TEEN


こちらは「A-TEEN」という同タイトルのウェブドラマの主題歌になっていて知りました。ドラマはわかりやすく言えば高校生の恋と友情の話なんですが、人間関係のゴタゴタにリアリティがあり、綺麗すぎないというか一筋縄じゃいかない感じがおもしろかった。そして要所要所で差し込まれるこの主題歌がまたぴったりなのよ。

セブチの持ち味である元気ハツラツ!オロナミンC的なパワーもありつつ、高校生の繊細さみたいな、弱さみたいな、そういうものがちゃんと加わってる。ピアノの旋律がいいアレンジじゃないですか? ウジプロデューサーすごいよ。私は感心した。そしてセブチはこういうタイアップ曲でも、ボーカルチームのメンバーじゃなくてパフォーマンスチームのホシがサビを歌ったりするのがおもしろいなと思います。




Triple H - RETRO FUTURE


曲に関してはね、以前しゃべり尽くしてるのでね、もう何も言うことはありません(過去記事参照→「トリプルエイチ、もといエモエモエイチ万歳 『RETRO FUTURE』」。しかし2018年が終わる前にこれを言っておかねばならない。


エモエモエイチ、懸念が的中してしまった。


8月頭に熱愛公表した時点で、あ、終わったなと思ったよ。トリプルエイチはもう活動できないな、と。だって彼らはアイドル。ヒョナのほうはまだしも、イドンは絶賛売り出し中の新人ボーイズグループのメンバーですからね。ファンの大半は若い女性だし、それが事務所の先輩かつセクシーが売りのヒョナと付き合ってるなんて、一揆ものですぜ。音楽番組の出演辞退だけで済むわけがなかろう。

実際、ヒョナとイドン2人揃って事務所辞めて(これが解雇なのか依願退所なのかはよくわからないけれども)その後、インスタにアツアツ近況動画をアップし続けてるのはなんなんすかね。ペンタゴンのファンかわいそうで仕方ねえよ。しかもこれで事実上トリプルエイチの活動は打ち切りなわけですから、トリプルエイチを応援していたファンのこともないがしろにしてると思うんですよね。

世界観が大好きだったのにさ、もう終わりだなんてひどい裏切りよ。でもヒョナイドンがあやしいと見せかけて実はヒョナフイだと思ってたのに、何のひっかけもなくヒョナイドンだったのは笑った。




以上、こうしてまとめて思いました。マイナーコードの曲多くね? ていうか全部そう? おれはなんて暗い人間だ。

それから、お前はモネク推してんのにモネクの曲はねえのかよってツッコミが聞こえる気がします。これについて言い訳すると、モネクはグループが好きだから曲も聞くし、今年発表された曲の中でいいなあと思ったものももちろんあるけど、自分がモネクのファンじゃなくても今後もずっと聞き続けていく曲があったかというと、ちょっと微妙。

例えばメンバーのI.Mが作った「어디서 뭐해 (MOHAE)」とかはかなり好きなんですけれども、これにはたぶん歌い出しが珍しくミニョクであること、そのパートがすごくよいこと、最後のサビもミニョクであること、この3点が大きく働いていますから、つまりフィルターかかりまくっている(ミニョク推し)。しかし、平々凡々な歌詞の内容のわりにアレンジが妙に洗練されているその対比というかバランスがすごくI am what I amっす。超スマート。

あとは、EXOの「TEMPO」を5曲の中に入れようか迷いました。この年末にとんでもないもの出してきたよね。曲から中世ヨーロッパの香りがするのすごすぎるし、あのセフンのパートが多くてしかもちゃんと歌えてることに感動した。ていうかEXOさんはいつから「EXOといえば生歌でしょ」になったんだろう。デビュー当時は生歌で声が出てなくて心配だったくらいなのにね。今やもう「さすが、格がちげえっす」という感じになっている。すごい。



果たして来年はどんな名曲が繰り出されるのか。我が推しのモネクは大賞を取ると言っていたので私はそちらも期待しています。

デンゼル・ワシントンはいい人なんだけど逆らってはいけない


どうも、こんにちは。

本日は、ただいま主演映画が公開中のこの方、デンゼル・ワシントンに注目したいと思います。

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1954年生まれ64歳(2018年現在)のアメリカ人俳優です。アカデミー賞受賞歴もある名優で、出演作は数知れず。私はまだほんの一部しか観れていないのですが、大体エリートで硬派で一本筋の通った役をやっています。

基本的には善人役であることが多いけど、何が良いって「暴力はダメだ、話し合いで解決しよう」じゃなくて「言うこと聞かないなら問答無用で黙らせる」というところ。まずは話し合いを持ちかけるし、相手が手を出そうとしてきたら悪いことは言わないからやめとけ、と警告するのですが、相手がそれすらも無視しようものならハンムラビ法典よろしく「目には目を、歯には歯を」の精神で叩き潰す容赦のなさです。

セリフで明示されなくてもその佇まいや仕草だけで、彼の生きてきた世界は非暴力でやってこれるほど甘い場所じゃなかったんだな、と思わせてくれるというか、バックグラウンドを想像させてくれる。そんな凄みがあります。不測の事態が起きても決して慌てず、騒がず(そもそも不測じゃないのかもしれない)ただ自分のやるべきことをやる感じがとてもシブくてかっこいい。SFかアクションかヤクザものしか観ない我が父も、かっこいいと思うハリウッド俳優としてデンゼル・ワシントンの名前を挙げていました。どうでもいい情報。

というわけで、デンゼル・ワシントンのシブかっこいい作品をいくつかご紹介します。



クリムゾン・タイド(1995)

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キューバ危機のさなかに起きた実際の出来事をもとに、海軍の潜水艦における緊迫のドラマが描かれています。ハリウッド恒例の大爆発も銃撃戦もありませんが、軍からの指令がトラブルによって途切れ、外との通信手段がない密室の中で艦長と副艦長が対立し、今後の世界の命運を左右しかねないミサイルを打つのか打たないのか、というスリル満点の展開です。デンゼル・ワシントンは、叩き上げのやりたい放題の艦長と対立するハーバード大卒のエリート副艦長役です。

この作品を観ていて、ふと音楽が『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのテーマ曲に似てるなと思ったんです。そしたら音楽監督が同じ人(ハンス・ジマー)だった。とはいえ、ハンス・ジマーは非常に多くの映画音楽を手がけてるし、当然その全部が似てるわけじゃないので、海賊ものと海軍もの、海つながりで似てしまったのかもしれない。



トレーニング デイ(2001)

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こちらは新人の麻薬捜査官の出勤初日を描いた話です。新人ジェイクをイーサン・ホークが、そのバディであり指導係でもあるベテラン捜査官アロンゾをデンゼル・ワシントンが演じています。アロンゾは、蛇の道は蛇ということで麻薬捜査官のくせに自分も麻薬やってるトンデモ刑事です(内容については以前少し言及しました→「イーサン・ホークもモソモソしゃべる」)。

アロンゾはおしゃべりかつ俺は警察だから何をやってもいいんだぜ的な卑劣なキャラクターです。私がデンゼル・ワシントンをちゃんと観たのはこの作品が最初だったのですが、思えば彼がこのような役をやるのは非常に珍しいんですね。いつもの善人役とはまた違った種類の凄みがあるので、もっとやればいいのにと思います。ハイテンション笑顔からいきなり真顔になって脅してくるのとか迫力があって怖い。



イコライザー(2014)

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イコライザー2(2018)

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元CIAエージェントが悪者を瞬殺する世直しシリーズです。デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコールは、普段はひっそりと一般人のふりをして過ごしていますが、現役時代の腕はいまだ衰えていません。1作目ではロシア人の少女を救い、2作目では黒人の少年を救うので、要するにバカ強いあしながおじさんの話です(1作目についてはこちらで紹介済み→「幻覚を見る男とワーカホリックの女」)。

1作目で働いていたホームセンターで大暴れしたので、2作目ではタクシー運転手に転職しています。マッコールさんは腕っ節だけでなく最新の電子機器にも強いらしく、タクシーアプリに登録して客を得ています。海外出張に出かけるお客さんには「帰国したら連絡してください。迎えにいくから」と声をかける粋な対応。

しかしマッコールさん不眠の設定はどこへやら。かつて真夜中に近所のダイナーへ行き、お湯だけ注文して(それはアリなのか?)わざわざ家から持参したティーバッグをぽちゃんするという謎の習慣を持っていたのですが、2作目では冒頭で一度だけお湯を注文するシーンがあるだけでその後は一切忘れ去られている。真夜中のダイナーシーンが好きだったので少し寂しい。




さて、記事を書いていて気づいたのですが、実は『トレーニング デイ』と『イコライザー』シリーズがなんと同じ監督(アントワーン・フークア)によるものでした。しかも同監督は他にもデンゼル・ワシントンを主役に据えて『マグニフィセント・セブン』(2016)を撮っています。『マグニフィセント・セブン』は、邦画『七人の侍』(1954)をもとにした西部劇映画『荒野の七人』(1960)のリメイクでして、デンゼル・ワシントンは7人のリーダー的存在のサム役。同じ監督なだけあって、サムの性格は基本的には『イコライザー』のマッコールさんと同じです。賢い、硬派、それとバカ強い(これ一番大事)。

私はマッコールさんのファンなので、このまま『イコライザー』シリーズが続いてほしいと思っています。映画じゃなくてドラマでもいいからやってくれ。そもそも昔のテレビドラマのリメイクらしいので、ありでしょう。デンゼル・ワシントンはあと何年動けますか?

とびきりの熱気をまとった話『BPM ビート・パー・ミニット』


どうも、こんにちは。

本日は社会派のこちらの作品をご紹介します。



BPM ビート・パー・ミニット(2017)

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1990年代初めのパリ、HIVやエイズに関する活動を行う実在の団体「アクトアップ・パリ」を描いた物語です。感染が日に日に拡大する中にあってなお、フランス政府や製薬会社の動きは緩慢。HIV感染者が多く所属する「アクトアップ・パリ」のメンバーたちは、製薬会社に乗り込んで新薬の普及を急かし、高校に乗り込んでビラをまきつつ啓蒙活動をし、ゲイパレードはクールなスローガンを背にチアガールの扮装で練り歩きます。


アクトアップというのは、80年代にアメリカのニューヨークで立ち上げられた団体で、その後、世界中に広がりました。私は予告映像すらチェックしてなくて、ポスターだけを見てかなりエモーショナルな話を想像していたのですが、むしろ真逆で理性的な話でした。何と言ってもアクトアップ・パリの活動の熱がものすごい。

物語はアクトアップ・パリの週1で行われるミーティングのシーンから始まります。ミーティングはルールが細かく決まっています。非常に民主的であり政治的であり、活動の本気度が窺えます。日本の国会よりもよっぽど進んでると思います。以下、ルールの一部。

・発言したい時は手を上げて、指名されてから
・賛成の意を示す時は指を鳴らす(拍手だと議論の邪魔になる)
・参加者の体調を考えて、煙草は廊下で吸う
・廊下では議論しない
・話が長くなりそうな場合は、進行役がタイミングを見て切り上げさせる

メンバーの中には穏健派も過激派もいますが、全員がそれぞれに自分の信念を持って動いているので、すべての行動に理由と根拠があります。たとえ意見が食い違っても、冷静さを忘れない。熱くなって仲間を罵倒したり、手を出したりしない。自分の命がかかってるからそれだけ活動にも真剣なわけですが、そこで意見が対立しても誰もキレないのはすごいなと私は思ったんです。人間ができてるな、と。でもちょっと考えたらわかりました。

ぶっちぎってる時間すらない。

一緒に活動してきた仲間は死んでしまうし、自分の体調も良くなったり悪くなったり、残された時間が限られてるのがわかるから願わくば効き目のある新薬が一刻も早くほしいし、そのために冷静に行動するんですね。「俺にはもう時間がない」的なセリフは何度か出てくるんですが、それが感情的な意味だけでなく、実は理性的な意味を含んでることに深みを感じました。



では、ここからは毎度恒例の浅い話に移ります。

序盤は一人のキャラクターにフォーカスせず、アクトアップの活動がメインで描かれるので、登場人物の名前と顔を覚えるのが大変かもしれません。全体的にドキュメンタリー調で、全員が本当に一般人に見えます。キャストはみんなほとんどメイクしてないんじゃないかと思います。アクトアップ・パリにはゲイもバイもヘテロもいるしHIV感染者もそうでない人もいるんだけど、どういうわけかゲイ率が高い。

それで、ひとり気になるやつがいる。なんかエジルに似てるやついる。

ご存知ない方のために、エジルって誰やねん、というところをまず解消しておきます。現在プレミアリーグのアーセナルに所属している元ドイツ代表のサッカー選手です。2014年W杯のドイツ優勝時には主力メンバーとして活躍したスター選手(この人は過去何度も彼女をすっぱ抜かれてるからたぶんゲイじゃない)。

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で、本作に登場してくるエジルに似てるやつというのがこちら。

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誰が主人公なのかよくわからない中で、このナウエル・ペレ・ビスカヤー演じるショーンは、しょっぱなのミーティングでも発言多めで目立ちます。アクトアップの中心メンバーなのね、というのはすぐにわかるし、なんだか見るからにゲイ(差別的な意味はありません)。前髪の金髪メッシュあたりにゲイ性を感じる。魔性を振りまいている感じがある。

物語が進んでいって、ショーンはアクトアップの新入りのナタン(アルノー・ヴァロワ)と恋人になり、後半はこの2人にスポットがあたることになります。

やっぱりお前か。

薄々わかってはいたけどやっぱりか。後半はショーンの体調が悪化してきてアクトアップの活動に参加できなくなり、ほぼ恋愛パートだけになるので退屈だったな(おい)。

しかし2人のピロートークでめちゃくちゃ真面目な話する場面があって、なかなかに重い話を腹を割ってしてる感じがとてもぐっときた。アクトアップに参加しているということで互いのバックグラウンドがある程度想像できるからこそ可能なことなんでしょうけれども。



さて、タイトルにも使われているBPM(ビート・パー・ミニット)は、脈拍の速さを示すもので、音楽のテンポを表す時にも使うらしいです。その名の通り、劇中の音楽に非常に存在感があります。こういうのをレトロEDMって言うのかな? という感じ。アクトアップのメンバーがクラブで踊り狂ってるシーンが3回くらい入るのですが、この時の音楽が特にいい。議論をしてる時や抗議活動をしてる時とはまた違う熱気に包まれてるのがいい。途中、宙を舞う塵にフォーカスしていって、それがHIVウイルスに変化する演出はニクいです。


クラブシーンで流れるのがこちら。


そして次の曲はブロンスキ・ビートというバンドが1984年に発表した「スモールタウン・ボーイ」を映画のためにアレンジしたもの。発表当時、歌詞の内容がセクシャルマイノリティたちに共感され、彼らの間で大きな話題を呼んだそうです。





本作を観る場合、薬剤や抗体などの物質の名前もポンポン出てくるので集中力が必要です。話の難しさはありますが、個人的にはそこがおもしろかった。こんなに目的がはっきりしていて、建設的な話し合いをし、行動に移す団体なら、ぜひ参加してみたい。

日本での知名度が低そうな本作ですが、こういう映画こそ広めてほしいです。日本は性教育が遅れてるとかなんとか言われているので、文科省や教育委員会の対応があてにならないなら、大人はこういう映画をどんどん推せばいい。ごちゃごちゃ細かいこと言ってないで、幅広い知識を持てるような映画を観れる環境を作りましょう。映画にはきっとそういう力もあるはず。

『野獣死すべし』 野獣を狩る野獣の父(と獣になれない息子)


どうも、こんにちは。

マガジンハウスが出版している「BRUTUS」という雑誌の2018年12月1号の特集が ”続・いまさら観てないとは言えない映画” だったので、ついつい買ってしまいました("続”ということなので、第一弾はちょうど1年前に発売されているようです。私はこちらは未購読)。読みながら、自分が観てない名作って何だろう、と考えてみました。

観てない映画はもちろんたくさんあります。ディズニーやピクサー系はだいぶスルーしてきてるし(『シンデレラ』(1950)や『白雪姫』(1937)などのド王道のプリンセスものさえも通らずに生きてきた人生)、『ローマの休日』(1953)も『風と共に去りぬ』(1939)もノータッチ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズはいつか観ようと思いつつまだ温めている。それから『ジュラシック・パーク』(1993)は寝た。

しばらく考えて、ピンときました。松田優作の出演作をまだひとつも観てないんだった。観よう。今すぐ観よう。というわけで、初・松田優作出演作鑑賞、こちらを選びました。



野獣死すべし(1980)

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伊達邦彦(松田優作)は、翻訳の仕事をしながら音楽鑑賞や射撃などの趣味に勤しむ優雅な日々を送っています。しかし、かつてカメラマンとして世界各国の戦場を巡った時の出来事によって目覚めた欲望を抑えられず、警察官の拳銃を奪ったのをきっかけに凶行を重ねていきます。


各所で言及されていますが、本作はオチに謎が多く、正直よくわかりません。原作小説ともかなり異なっていて、原作者直々の指摘も入ったとか。にもかかわらず、駄作ではないどころか限りなく名作に近いのは、当然、主役が松田優作だからでしょう。松田優作から繰り出される超絶長いセリフ、狂気の一人芝居。この人の演技を見るためだけの作品と言っても過言ではないと思います。巷で「映画というより舞台」なんて言われているのも納得です。

よかったー。記念すべき初・松田優作、これにしてよかったー。

ハードボイルド映画なのに心が満たされました。なんだか私はハードボイルド作品と相性が良いようです。戦争帰りで凶行に走る男の話という点で、わりと個人的に好きな『インディアン・ランナー』(1991)と少々近いものがありそうです(過去記事参照→「ヴィゴ・モーテンセンはアウトローをやってもスマート 前編 『インディアン・ランナー』」)。

松田優作のものまねをする人が結構な数いますけれども、言うことと言えば、お決まりのアレ「なんじゃこりゃあ……!」で、あとはまあ顔芸じゃないですか。こんな感じの。

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私の中の松田優作は、このイメージで固まっていたわけです。でもちゃんと作品を観て思ったのは、ものすごくクセになるしゃべり方をするということ。確かに真似したくなるしゃべり方。ていうか真似した。

例えば、列車の中の名シーン。

「ラム……コアントロー……それに……レモンジュースを少々、シェイクするんです……。わかりますか」

「少々」のところ、「ショーショー」とするのがコツ。

音声学的な観点で言わせてもらうと(日本語学専攻の人間が通ります)日本語の標準語においては「いか」の「す」と「〜で」の「す」は発音が違います。前者は口をすぼめて発音しますが、後者は口を少し横に開いて歯の隙間から空気を押し出す感じで発音します。しかし、松田優作は語尾の「す」も、「すいか」の「す」と同様に口をすぼめて発音する傾向があります(本作においてだけなのか、普段からそうなのかは勉強不足のため不明)。

『野獣死すべし』の松田優作のものまねをする時は、すべての「す」を口をすぼめて発音しましょう。無駄な知識。

さて、みなさんご存知、松田優作には俳優の息子が二人いらっしゃいますね。長男・龍平と、次男・翔太。どちらも面影がありますが、特に龍平のほうが父親に似ていると思います。

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目のあたりが似てるなとは以前から思ってたんです。そして口元もすごく似てることに気づきました。髭を生やしてると余計に。しかしそれ以上に似ている部分があるのです。


歩き方そっっっっっくり。


そんなことあります? 声や話し方が似てるとか、仕草が似てるとかならわかりますけど、親子で歩き方が似るなんてことありますか?

息子・松田龍平は、ただいま日テレで放送しているドラマ『獣になれない私たち』に、ガッキーこと新垣結衣演じるヒロインと "ラブがあるかもしれない" 相手役で出演中。非常に現実的で身も蓋もないことを言う根元恒星というキャラクターです(好き)。根元さん、『野獣死すべし』の伊達とまったく同じ歩き方をしています。 長い手足を持て余しているような、のそのそとした歩き方。伊達は劇中で「死人みたいな歩き方をする」と言われてました(例え方……)。

野獣の父と獣になれない息子(なのにそっくり)と考えても充分おもしろい。ただ、ちょっと気になることがあります。

伊達は一見すると無差別殺人者(=野獣)のようですが、殺人に目覚めたきっかけは戦場で殺されかけた時の正当防衛であり、その後、少女をレイプする男や違法カジノの経営陣を殺していることを思うと、「野獣死すべし」はむしろ伊達の考えであって、野蛮な連中は死ぬべきだということで犯行に及んでるのかなとも思いました。共犯者を唆して殺人をさせた後の「君は今、確実に美しい。神さえも超越するほどに」という発言からも、自分の行いは神の所業だと思っている節があるように見受けられます。

つまり、野獣ハンターの父と獣になれない息子、ということになるのだろうか……。

他にも感慨深いところは多々ありまして、例えば、龍平のデビュー作『御法度』(1999)について。この作品は、龍平演じる新撰組の新入りの美青年が仲間の隊士たちを次々と翻弄していく(浅野忠信、田口トモロヲ、トミーズ雅、ついにはビートたけしや武田真治までも!)という腐女子歓喜のストーリーなのですが、主人公はその美しさもさることながら剣術の腕も高く、新撰組への入隊理由は、すばり、人を殺せるから。殺すか殺されるかの環境で死の近くにいることに喜びを感じるやばいやつなのです。

誤解を与えないために言っておくと、『御法度』は単なるBL映画でなく、なかなか奥深いミステリーでもあります(そこそこキャリアのあるキャストたちが妙にセリフ棒読みなのが気になるのは目をつぶる)。龍平はこの作品で第23回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。

親子して死に魅入られてる危ない役で映画界に名前刻んでるの、すごいな。そういう意味では、次男・翔太も2009年放送のTBSドラマ『ラブシャッフル』で一応戦場カメラマン役やってました。松田親子には、なんか、あるんでしょうね。そういうオーラ。



ところで、ほんのちょっとしか出てこないけど、伊達の同級生役で岩城滉一、風間杜夫、阿藤快などのそうそうたるメンツが揃っています。泉谷しげるも出てる。でも、パンチパーマの鹿賀丈史が一番、画ヂカラある。