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気晴らし細論

牙は研いでも詰めが甘い 『ヘルドッグス』


どうも、こんにちは。

潜入捜査モノが好きな身としては結構楽しみだったのだけど、期待していたのとなんだかちょっと違いました。ネタバレあります。



ヘルドッグス(2022)

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元警官の兼高(岡田准一)は、警察との取引により関東最大のヤクザ組織である東鞘会(とうしょうかい)へ潜入することになります。課された任務は、東鞘会の若き組長・十朱(MIYAVI)が持つ秘密ファイルを奪取すること。兼高は東鞘会の中でも一、二を争う凶暴性を持つ室岡(坂口健太郎)とバディを組み、組織内で急速に力をつけていきます。



私の思う潜入捜査モノの魅力というのは、結末までどう展開するか全く読めないところです。潜入捜査というと、大抵は正義感に溢れた警察官がヤクザ組織に潜入するものと相場が決まっているので、潜入期間が長くなるにつれて敵であるはずの連中に情が生まれてしまったり、逆に仲間であるはずの警察がヤクザ以上に黒いことやってるのが発覚して不信感を抱いたり、そういう様々な葛藤の中で主人公がどういう選択をするのか、脚本とキャラクターの性格次第で如何様にも変わるのがおもしろい。最終的には予定通りヤクザ組織を潰すのか、警察を裏切ってヤクザ側につくのか、そして主人公の正体はバレるのかバレないのか、死ぬのか生き残るのか、いずれにしてもハッピーエンドはありえないだろうというハラハラドキドキ感が大好きなの。

でもヘルドッグスはその前提がすでに違ってた。まず主人公の兼高(出月)がすでに警察を辞めて私刑みたいなことをやっているので、その罪を見逃す代わりに警察に協力しろや〜というような、ある種の脅迫ではあるけど兼高にとっても一応旨味のあるwin-winな仕事なのよ。だから兼高の潜入は正義感や罪悪感や警察への不信感みたいなものとは無縁だし、というかそもそもジュンイチオカダが強すぎるので兼高が死ぬことはないなという感じ。無双一択。だってそいつファブルだぜ。

そんなわけで期待していたハラハラドキドキとは早々にオサラバし、何やら仲睦まじい様子の兼高と室岡の師弟関係やアクションを楽しむことにした。アクションは最高。何度でも見たい。しかしどうにも兼高のキャラが掴めずあまり入り込めなかったし、なんかいろいろツッコミどころ多かったよね。

①兼高って結構ツメ甘いよね
十朱に兼高の潜入は完璧だったと評価されてたものの、私の目にはとてもそうは見えなかったのだが。その1、かつて自分が勤務していた交番を見つめていたせいで元同僚に声かけられ、それを組の連中に見られてたのがきっかけで正体バレる。その2、自宅に警視庁の阿内を招き入れ、エミリと鉢合わせてあわや万事休す。うん。どこが完璧なんだ? また、華岡組のところに乗り込む直前、服に血がべっとりついてる兼高とエミリの「怪我したの?」「返り血だ」なんて会話にもヒヤヒヤした。そんな甘い声で話してたらお前らの関係モロバレだろう。

③東鞘会もツメ甘いよね
こいつも潜入捜査官! そしてこいつも潜入捜査官! と同じ穴のムジナが次々と判明していくところは新しくておもしろかったんですが、東鞘会、部外者に入り込まれすぎじゃない? あまりにもガバガバ。 十朱は異例の人事で組長に抜擢され、兼高はたった一年で組長秘書にまで上り詰める。確かに兼高が組長秘書に任命されるところは正直ちょっとテンション上がったよ。でもうまく行きすぎ。例えば兼高の異常な出世の速さが気に入らなくて監視してたキャラがいてそいつに正体を見抜かれる、みたいな展開が必要。三神はちょっとそれに近いものがあったけど、お歯黒(三神の部下)が兼高の正体を知るのは兼高のうっかりによる棚からぼたもちだったからダメです。

あと、土岐の指詰めを阻止するところは十朱と兼高の根がカタギなのが出たよね。二人が年若いのもあると思うけどヤクザに染まりきれてない。ウィキペディアによると、「暴力団員にとっては指詰めはされた側が必ず許さなければならないほど重い行為」「このような指詰めは罰として強要されるものとは限らず、掟を破った者が指詰めよりも重い罰から逃れることを期待して、反省の意思を示すために自発的に行う場合もある」とのことなので、土岐の行動はまさにこれだね。十朱と兼高からしたら、もう済んだ話なのに部下に「いやこれはケジメなんで!」っつって指詰めされるなんてマジ勘弁って感覚なんだろう。令和のニューヤクザスタイルと言えなくもないが、うん、やっぱダメだな。

③そもそも設定のツメが甘いのかもしれない
エミリの肝の据わった凜とした佇まい、とてもクールでかっこよかった。松岡茉優ちゃんは本当にすばらしいね。でも象牙ビジネスをやめさせたいという思いだけでヤクザの女になれるものでしょうか? 兼高が潜入捜査官と知らずに恋仲になってたようですが、象牙ビジネスで繁栄する東鞘会が憎いのであればそこにいる人間のことも憎いと思うのですがどうでしょうか? そして東鞘会を潰しても世界中の象牙ビジネスが終わるわけではないと思うけどそれはいいのでしょうか?

典子さん(大竹しのぶ)の殺しは絶対すぐにバレるけど大丈夫? あの状況では犯人は典子さんしかありえないもん。典子さん、地の果てまで追われて始末されない? 東鞘会は壊滅したからセーフ?

室岡が「射精できない。弾がない」と言ってましたが、それは一体どういうこと? 無精子症は精液内に精子がないことを言う(つまり射精はできる)のだし、弾がないことと射精できないことには因果関係がないと思うのだが? 本編中もずっと気になって仕方なかったので調べたけどやっぱりよくわかんない。ていうか室岡に設定盛りすぎじゃない? 満腹中枢が壊れただけじゃなくて、それも親からの虐待のせいなの? それとも先天的なものなの? 原作にはそのあたりの詳細は載ってるの? 矛盾を見つけると解決するまで納得できないたちなので誰か教えてください。



すでに長文になっていますがディスはこれくらいにして、私が最も気になった点についてお話ししたいと思います。兼高の行動原理、手を下すか否かの判断基準についてです。

もし私の正体がバレたら兼高は私を殺すのかな? という典子さんのセリフを聞いて、兼高ってそんな血も涙もない修羅だと思われてるの? と疑問に思い考えてみました。 兼高はいつも穏やかだし、声音もやさしいし、判断が素早いからやると決めたら即行で始末するけど無意味な殺生はしないし、殺すかどうかの判断には自分の感情を交えず、常に善悪や数の論理に従う倫理的な人間だと思います。基本的な考え方が警察官。

例えば、自分と同じく東鞘会潜入中の捜査官(身バレした)を殺したのは、彼を生かしたら自分の正体もバレて東鞘会を潰すことができなくなるからに他ならない。潜入捜査官一人の命か、東鞘会に踏みにじられる無数の市井の人たちの命か、二つを天秤にかけて数の多いほう、より守るべき弱者を選んだ。

クライマックスの俺と女とどっちが大事なんだよ事件にしても、単純に二人の属性を考えた時、市井の人間であるエミリか、ヤクザで人殺しの室岡か、どちらの命を助けるべきかとなれば当然エミリでしょう。女だからとか、恋愛感情とか、そういうものは全く入ってないように見える。むしろ兼高の心情としては室岡を生かしたかったんじゃない? だから自分も死のうとしたんでしょ。待てよ、つまり雨の中で室岡を逃したのが唯一兼高が感情で動いた瞬間なのかな……。

それから、果たして室岡を殺す必要はあったのか? という疑問も生まれたのでこちらも考えました。室岡は東鞘会に追われる身だったが、東鞘会はすでに壊滅状態なのでそれだけで言えば別に室岡を始末する必要はなかった。でも室岡は東鞘会が壊滅状態になっていることを知らないし、エミリが何者なのかを全ては理解してないと思うし、自分の身の安全を考えるとエミリを生かしておくことはできないよね。つまり室岡を生かしておいたら室岡はエミリを殺す。ていうかそれ以前に兼高は私のものってエミリにマウント取られてパチ切れちゃってるから、大好きな兼高の兄貴がエミリを選んだら二人まとめて殺しそう。



十朱と兼高のバトルはなんかあっけなかった気がするし、兼高とエミリを恋仲にする必要もなかったと思う。腑に落ちないところはいろいろあるんだけど、セリフがこもってたり早口だったりして聞き取れなかったところが多いので、もう一回字幕付きとかで見たいのよね。それらが聞き取れれば少しは疑問が解消されるのかもしれない。正直、雨の中の室岡のセリフがずっと何言ってるかわかんなくて音声トラブルか? と思った。

『DUNE/デューン 砂の惑星』 に再びハマってる件


どうも、こんにちは。

公開直後にちゃんと映画館に観に行って記事も書いた怪物くんと教育ママ 『DUNE/デューン 砂の惑星』の良さを今更ながら再評価しています。

おもしろいけどちょっと長いんだよなと思ってた。でも改めて観てみたら意外とテンポよくテキパキ進んでるなと認識を改めました。YouTubeで公開されてる冒頭10分間にしても、ポールが見てる夢の内容から始まって、目を覚ました直後はすぐに朝食の場面に変わり、その後ポールがオーディオブックみたいなものでアラキスについて予習してる場面で観客にも自然にアラキスの説明をしてるのはとても上手。そして皇帝の使者から領地替えの命が下る式でアトレイデス家がアラキスに向かうことが判明する。まったく無駄がない。

ということで、こちらもまたYouTubeで公開されている2分半足らずの剣術指導シーンだけでグッとくるポイントが無数にあるのでご紹介したいと思います。映画というのは時間が限られてるのでシーンを端折れば端折るほど内容が濃くなって、ひとつひとつのシーンに見所がいっぱい詰まるようになるわけ。ともっともらしく言ってみたものの、主にシャラメ賛美のいつもの中身のない戯言ですのでぜひお暇な方だけどうぞ。



・「足音でわかる」
ガーニイの「ドアに背を向けるな」に対する返答。のちにアラキスでサンドワームに襲われるアクシデント発生時にも同じセリフが出てきます。スパイスの幻覚作用に当てられてぼんやりしていたポールをガーニイが助けるのですが、ガーニイが背後から近づいてくる時にこの「足音でわかる」というセリフがリフレインする。

・「歌を頼むよ」
訓練は気が乗らないから歌でも歌ってくれというよくある軽口にも聞こえるセリフですが、ガーニイは剣士であると同時にバリセット奏者でもあり詩人でもあるので歌もうまいのかもしれない。ガーニイの雅なキャラ設定が垣間見えるセリフ。

・「無礼だぞ」の前の小さな舌打ち
いきなり剣を投げてきたガーニイに対してポールが「無礼だぞ」と言う前に小さく舌打ちしてる。ポールは公爵の息子だからガーニイは家来。そんな主従関係がありながら剣を投げるガーニイも容赦がなくていいし、ちょっとキレてるポールもいい。

・「老いぼれ(Old man)」
家来を挑発するシャラメ。シンプルに声がいい。剣の刃の部分を肩に置くファイティングポーズが好き。

・ガーニイ役のジョシュ・ブローリンよりもシャラメのほうが背が高い
公称でジョシュ・ブローリンは178cm、シャラメは182cm。体の厚みは比べるまでもなくジョシュ・ブローリンに軍配が上がるのに、背が高いのはシャラメなのいいよね。ひょろ長いシャラメ。

・「Mood?」
気分じゃないと言って訓練を避けようとするポールに対し、いついかなる時でも敵が来たら戦うのみ!と叱咤するガーニイ。一見よくあるスポ根スパルタ指導に見えるけど、この時点ですでにアトレイデス家の領地替えは決定事項です。レト公爵もガーニイもたぶんダンカンもこの領地替えが裏で仕組まれた危険なものであることを最初から理解してるみたいなので、ガーニイはそれをポールにも覚悟させようとしてるっぽい。実際アラキスでハルコンネン家の奇襲を受けてるし。

・机を飛び越えるシャラメ
抱え込み飛びしてる! 運動神経のいい人しかできないやつ! シャラメが運動神経いいようには見えないけど!(失礼)

・「I have you(僕の勝ち)」
シンプルに声がいい(2回目)。そして「have」には打ち負かすという意味がある件を思い出して勝手にうれしくなっちゃった。「have」の万能さについてはこちらを参照のこと→大好物は潜入捜査もの その②

最近の作品だと『ブラック・フォン』(2022)でも言ってた。冒頭の少年野球場面にて、ピッチャーの主人公がホームラン(二塁打とか三塁打かもしれない。うろおぼえ)を打たれてしまうのだけど、試合後にその打った男の子があの球めっちゃよかったぜって声かけてくるところ「You almost had me」って言ってました。字幕は「シビれたぜ」となってたけど、もう少しでやられるところだったって意味よね。あと余談ですが主人公のメイソン・テムズくんはかのビョルン・アンドレセンを彷彿とさせるとても凛々しいお顔だったのに全然話題になってないのなんで?



最後の最後で話が逸れてしまいましたが、剣術指導シーンの萌えポイントは以上です。たった2分半でこれだけ楽しんでる自分すごくない? 我ながら才能だと思う。メイキング映像を見て知ったのだけど、シャラメってテコンドーやってたらしいの。空手とかジークンドーとかマーシャルアーツじゃなくてテコンドーっていうのがなんかシャラメっぽい。良い。続編が来年秋公開予定ですが全然待てません。

あの子を解き放て 『トップガン マーヴェリック』


どうも、こんにちは。

日本公開からはや二ヶ月。感想がまとまらないから次回にしますと言ってから一ヶ月。未だに感想がまとまりません(え?)。長文&ネタバレあります。ちなみに前作の記事はこちら→天才でも嫌われないのはトム・クルーズだから 『トップガン』



トップガン マーヴェリック(2022)

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世界的ヒット作『トップガン』(1986)の続編。米海軍の過去40年間において空中戦で3機の敵機撃墜記録を持つ唯一のパイロットであるマーヴェリック(トム・クルーズ)は、その輝かしい戦歴とは裏腹に型破りな性格のせいで厄介者扱いされていました。新たな問題行動により懲罰処分を受けるかに思われた折、ある特殊作戦に参加する選りすぐりの精鋭パイロットたちを鍛えるよう命じられます。パイロットの中にはかつて訓練中の事故で亡くなった相棒グースの息子であるルースター(マイルズ・テラー)の姿もあり、マーヴェリックは困惑します。



いつかの記事で徹頭徹尾すばらしい映画なんてウルトラレアだと言いましたが、これがそのウルトラレアの映画です。マジで文句をつけるところがひとつもない。完璧。並の監督やプロデューサーなら150分くらいの尺にしてしまいそうな濃い物語を130分で収めている。これが一番すごい。一切の無駄なくシームレスに物語が進んで行くので上映中はとにかくスクリーンに没頭してしまって、待てよ、よく考えたらあのシーンって……みたいなのが後から次々出てくる。これは端折りのプロフェッショナルこと宮崎駿作品でしか感じたことがなかったやつ。何十回と観ても毎回新しい発見がありそう。きっと本編に収録するかどうか迷いに迷って泣く泣くカットしたシーンがたくさんあるはずなので、円盤化した暁にはぜひともそれらを収録願いたい。でなければ恨みます。

だってヤングガンズ(ルースターらミッション参加候補パイロットたち)が楽しそうに訓練してるからスポ根映画に見えるけど、成功率ゼロに近い死のミッションに挑む軍人たちの物語なんだから、バーやビーチでパリピしてる場面もつかの間の休息なんだなと思うと妙に切ない。たぶん彼らの恐怖や迷いは想像で補完してくださいって話で、その分、戦闘機シーンにたっぷり時間を割いてると思うんよ。なにせ戦闘機シーンだけで少なくとも4回は見せ場がある。戦闘機シーンはCGなしでガチリアル映像を撮りたかったトム・クルーズの熱の入れ具合がもろに表れている。というわけで、まず挨拶がてらそれについて簡単にいいですか?

①実力テスト挑発ドッグファイト
トップガンを卒業した精鋭パイロットたちを手のひらで転がすようにキルしていくマーヴェリックの見事な腕前な。これはSNSで得た情報なのですが、パイロットたちは元々の所属部隊で日頃からF-18に乗っています。それこそマーヴェリックが訓練初日に言ったようにマニュアルなんて全部頭に入っています。にも関わらず、しばらく実践から遠ざかっていてなおかつF-18は久々ですとか爽やかに言ったマーヴェリックが彼らをコテンパンにしてしまうのエグくない? 普通ならデスクについて指揮官をやっている年齢の老兵パイロットとは思えない。そしてこの一連のシーンは編集がすばらしくて、パイロットたちがキルされる→悪態をつく→腕立てする(キルされたら腕立て200回の罰ゲーム)というシークエンスのテンポの良さがたまらん。そしてフェニックスの流れるようなサノバビッチが聞けます(好き)。

②2分15秒チャレンジ
ミッションのクリア条件が厳しすぎるゆえに訓練生たちが誰一人クリアできなかった実践シミュレーションをマーヴェリックが一発で完クリするのさすがとしか言いようがない。しかもミッション達成のために掲げた時間制限をさらに短く設定した上での達成。訓練生たちが抱いていた“これは達成不可能なミッションなのでは?”という不安を一気に払拭する。手本を見せて希望を与え、精鋭のお前たちならできるだろう、やってみせろと発破をかける。そして若い世代にはもはや伝説と化している己の輝かしい実績を、目の前で本物だと証明してみせる。なにこの最高の教官。

③ミッション本番
過酷な訓練のおかげでシミュレーション通りに目標を爆撃することに成功し、追ってくる敵機および地上からの射撃を掻い潜って敵地を脱出するドッグファイト実戦。緊張感がすごすぎて力が入っちゃう。急旋回とフレア弾の散発によりギリギリで交わし続ける彼らに、よくもまあそんなにうまく躱せるものねと思ったのち、そういえばこの人たちは精鋭中の精鋭だった……マーヴェリックのせいで忘れてたけど……となる。納得。全編通して総合的に一番優秀なパイロットはフェニックスだよね(好き)。

④F-14 vs 第五世代機
撃墜されながら奇跡的にほぼ無傷で生き延びたマーヴェリックとルースターがF-14に乗り込むクライマックス。そうきたか、とここでもうすでに膝を打った。かつてグースとともに乗り込み訓練に励んだF-14の後座にその息子であるルースターを乗せて飛ぶなんてアツすぎ。そして40年近く前の旧機で最新鋭の第五世代機とどこまでやれるかという話だったのに、敵2機vsこちらは1機で蓋を開けてみれば完全勝利なのバケモノかよ。意味わからん。前方と後方を敵機に挟まれた状態で後方の敵機からミサイルが放たれた瞬間、前方にいる敵機の前に飛び出て自分を狙っていたミサイルをそいつに当てるのやばい。それはマリオカートで赤こうらが迫ってきた時に使う手段です。

無事空母に帰還し、お前は命の恩人だありがとうとマーヴェリックが言ったのに対して、ルースターは父の代わりです(父だったらやったであろうことをやったまでです)と答えるじゃん。ただでさえ感動のシーンなんだけど、2回観て気づいた。違うんだよ。父の代わりじゃない。グースが生きてたとしてもグースはマーヴェリックと同じ機体に乗ってるから、グースにマーヴェリックを助けることはできないんだよ。パイロットとして僚機として飛ぶルースターだからこそマーヴェリックを助けることができたんだよ。はあ泣けるね。



さてクソ長い前置きはここまでにして本題です。続編としての完成度という点において、前作で目立ったマーヴェリックの協調性の低さと規則を軽んじる性格が歳を取ってもそのままで安心した。「そんなことしたら懲罰ものだぞ」なんて周囲の声はもはやフリ。冒頭から最新機のテスト飛行で無茶をし、訓練中に最低高度を破るのも、管制塔をかすめ飛ぶのも、お前退役間近になってもそんなことやってんのか、だからまだ大佐なんだろうな、と思ったら意外と軍の中では評価されてて本人が昇任を固辞してるの草。やっぱりアメリカは腐っても実力社会なんだ。たださすがに少し丸くなってはいるようで、規則もむやみに破るのではなく意味があってそうしているところは歳をとって場数を踏んだおかげなのかな。成長があってよかったね……。

そしてマーヴェリックとアイスマンの関係についても言及せねばならない。これは物語の進行がシームレスすぎて疑問を抱くのが遅れる場面のひとつです。前作から今作までの空白期間中、アイスマンがマーヴェリックの後ろ盾としてマーヴェリックの様々な無茶に対して組織が文句を言えないように取り計らってきたことがさも当然のように語られ、胸アツすぎて一回普通に受け入れてしまったのだけど、よくよく考えるとこれは膨大な行間を読む作業が必要です。

確かに前作のラストでマーヴェリックとアイスマンはミッションを達成して死地から生還した。アイスマンにとっては万事休すという場面でマーヴェリックに救われた。絆が生まれるのも当然だし、お互いを認め合うのも納得。マーヴェリックのあまりの協調性のなさを危険視していたアイスマンが、マーヴェリックのパイロットとしての腕と度胸を再認識して少し考えを改めるきっかけになるのはわかる。だけどそれでもマーヴェリックが危険人物であることに変わりはないんですよ。軍組織の人間としては考え難い傍若無人っぷりなので、それをアイスマンがあのミッション一つでまるっと受け入れるようになったとは考えにくい。つまりこの35年間で紆余曲折があったに違いないのです。

アイスマンが着実に出世街道を進んでいく一方でマーヴェリックはきっと勲章もらったり懲罰くらったりを忙しなく繰り返して、それを見てアイスマンはやっぱりこいつすごいな、と、またやったのか、を同じ数だけやって、マーヴェリックに忠告を与えることもおそらくあったでしょう。でもそんなのマーヴェリックは聞かないから若い頃は相変わらずぶつかったりもしたでしょう。そのうちマーヴェリックが出世なんかにはまるで興味がないことや、マーヴェリックの腕が必要不可欠なミッションがあることにアイスマンは気づいて、出世によって自分の持つ権限が大きくなるとともにマーヴェリックをパイロットとして生かそうとしていった。組織を動かすのはアイスマンの仕事、現場を動かすのはマーヴェリックの仕事、という感じで年齢を重ねるとともに二人の争いは減っていって、今作でのよき関係になったのではないかと予想します。

また、アイスマン繋がりでSNSでも話題になっているセリフ「It's time to let go(日本語字幕:過去は水に流せ)」の解釈についてです。直訳すると「もう“let go”する時だ」となるわけですが、“let go”には、手放す、解放する、自由になる、などの意味があり、ルースターのことを言ってるようにも、グースを失った事故のことを言っているようにも、どちらにも受け取れます。しかしその後に続く二人の会話の中で、ミッションに行かせたらルースターは死ぬかもしれない。でも行かせなかったらもう俺のことを一生許さないだろう。どちらにしても俺はルースターを失う。どうしたらいい? とマーヴェリックが言うので、おそらくこの“let go”はルースターのことだと思うんだ(もちろんグースのことも潜在的に含んでるだろうけど)。つまりアイスマンは「もうあの子の手を放す時だ」と言ってるの。あの子を解き放て……。アイスマンはアシタカ……。そしてマーヴェリックはモロ……。やだなにそれ……。

そもそもね、前作のヤングマーヴェリックはグースが唯一のダチみたいな感じだったじゃん。アイスマンとはバチバチだったしさ。でも35年たった今ではそんな胸の内を吐露できるようになるまでアイスマンのことを信頼してるのか……と、またいろんな行間を読む作業が必要になるじゃん。そしてアイスマンは病死するじゃん。マーヴェリックはまた理解者を失う。なんて罪な話だ。



というわけでもう何もかもすばらしい『トップガン マーヴェリック』において、しいて心残りを挙げるならヤングガンズの制服姿が見れなかったことっすね。アイスマンの隊葬の場面に彼らもいるらしいのだけど、ろくに映らないからよくわからない。だってあれはマーヴェリックの胸に輝くおびただしい数の勲章を確認する場面でしょ。

あと唯一疑問に思ったのは、複座機のペアが二人一緒に召集されてないのはなんでだろう? 前作ではマーヴェリックとグース、アイスマンとスライダーは一緒に呼ばれたわけだし、フェニックスとボブが初対面なのは劇中で触れられてたけど、ペイバックとファンボーイも元の所属は別らしい。フェニックスやペイバックはいつもは単座機に乗ってて相棒がいないとか? でもボブやファンボーイには普段一緒に乗ってる相棒がいるんだろうから、そっちをペアで召集するとかはしないんだね?



近年ハリウッドではキャストやスタッフが白人男性ばかりの映画に厳しくなっていて、主要キャストに白人以外を必ず入れろとか、女優へのギャラを上げようとか、多様性と平等が求められていますが、その点においても今作は見事にクリアしていた。前作ではトップガン訓練生の中に1人黒人男性がいたような気がするけど、ほぼ白人男性で占められていた。手をあげる男なんてやめておきなよ 『G.I.ジェーン』の記事で言及したように、2010年代になってようやく女性の実戦参加が認められるようになったわけだからそもそも前作の時には女性パイロットというのは制度的にありえなかったし、今回は女性がいるだけでなく、男性もラテン系、アフリカ系、アジア系といろんな民族の人がいて、おう、やるやん、となりました。

なお、ルースター役の最終オーディションに残ったのが、マイルズ・テラーの他、最終的にはハングマン役で出演したグレン・パウエル、そしてニコラス・ホルトだったそう。マイルズ・テラーはグースにそっくりだし大成功だったと思うけど、ニコラス・ホルトのルースターはより繊細そうで興味がある……。

斎藤一役に松下洸平は天才、解釈の一致 『燃えよ剣』


どうも、こんにちは。

世の中のトレンド的にはトップガンマーヴェリック最高だよねという話をするのが正解なのだと思いますが、感想が長くなりすぎてまったくまとまらないので次回にします。本日はこちらの作品をば。



燃えよ剣(2021)

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武州多摩の農村で生まれ育ち、百姓ながら剣術の腕を磨く ”バラガキ” の土方歳三(岡田准一)は、武士になりたいという夢を抱いて近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)らとともに京へ上ります。市中を警護する浪士組に参加した彼らは京都守護職に就いた会津藩主・松平容保(尾上右近)の後ろ盾を得ると、やがて倒幕派を粛清する一大勢力となり新撰組としてその名を轟かせます。


以前、三浦春馬が五代友厚役を演じた『天外者』を明治維新上級者向けの作品だとご紹介しましたが(過去記事参照→明治維新上級者向けムービー 『天外者』)、『燃えよ剣』ははっきり言ってそれを上回る超上級者ムービーです。だって序盤の土方は多摩弁ゴリゴリだし、京に上ってからは町人や隊士の中でも上方ことばが飛び交い、長州藩士も土佐藩士もそれぞれゴリゴリのお国ことば、さらには会津藩主の松平容保やら、お公家や天皇といったやんごとない方々も登場。みんな早口で全然何言ってるかわからん。新撰組の歴史を事前に掴んでないとなんのこっちゃさっぱりだと思います。

とはいえ、本作は土方が地元じゃ負け知らずでやんちゃしてた時代から函館戦争に至るまでの半生を語るストーリーのため、新撰組の物語というよりも土方の主観にかなり寄っています。かの有名な池田屋事件は新撰組の歴史としてはかなり初期の出来事だったりするのですが、本作では後半の盛り上がりポイントになってたりして、そういう意味でも土方が新撰組をいかにして大きくしたか、みたいなところに重きが置かれていたんでしょう。司馬遼太郎の原作を読んでないから何とも言えんけどたぶんそう。

つまりは土方の鬼副長っぷりや、以外とお茶目なところ、下手くそな川柳、沖田と仲良しじゃん眼福、そしてジュンイチオカダのキレキレの刀さばきに注目する映画なんだと思うの。きっと新撰組オタたちの見たかったものが全部詰まってて最高だと思うの。でもごめん。私がこの映画の最大の功績だと思うのはそこじゃないの。斎藤一役に松下洸平を起用したところなの。

斎藤一って映像作品でも漫画でもゲームでも塩顔のことが多いけどなんでだろう。実物の写真とか見ると結構はっきりした顔立ちだと思うのだけど、もう斎藤一は塩顔でないとしっくり来ない。隊士の仲で一、二を争うくらいに長生きしてるのに死神っぽい。その点、松下洸平はぴったり。そしてこれのすごいところは松下洸平が朝ドラ『スカーレット』に出る前に撮影しているということ。見つけてきたのプロデューサー? 監督? すごい。というわけで私が好きなシーンをご紹介します。

①初登場時
試衛館の面々が八木邸で飯を食ってる時に現れる斎藤、中途半端に開いた襖を左手の甲で押して開けています。シンプルに手の甲で襖を開けること、ある? なんでそんなに爽やかなの? しかもこのシーンで近藤さんが斎藤のことを「旗本を斬って逐電していた斎藤くんだ」ってさらっと紹介してるんだけど、その紹介文句ヤバくない? なんでそんなに爽やかなの? そうだこいつら人斬り激ヤバ集団だった……。

②新見錦の手下の野口暗殺時
「同道するよ」と爽やかに言って安心させた直後、鳩尾に肘鉄し(鞘で突いてる?)首を串刺しにする早業〜〜〜。刀の長さ的に脇差に見えるんですけど、そうだよね? 脇差だよね? 映像作品で脇差使ってるの初めて見たかもしんない。きっと打刀より短い脇差のほうが速く抜けるからだよね、そうであってくれ。かっこよすぎる。

③芹沢鴨暗殺時
斎藤一は左利きだったとも言われており(諸説あり)、本作でも左利き説を採用している模様。しかし武士たるもの刀は腰の左に差すべし(つまり右手で抜く)という世界なので基本的には右手で刀を振るったであろうし、本作でも先述の野口暗殺時には右手に刀を持っていたはず。まあ速すぎて見えないから自信ないけど。ところが芹沢鴨暗殺時には左手に刀持ってるんすよ……。土方が芹沢鴨の心臓を突くと同時に斎藤が首筋を斬ってたので、二人が重なるように前後に並ぶには斎藤は左手で刀持つのが一番スムーズだったのかもしれない。中の人に左利きである松下洸平を持ってきたのは本当に天才。
※追記:見直したら野口暗殺も左手でやってましたごめんなさい。でもこれで脇差だと確信した。打刀は長すぎてたぶん左手では抜けない。

他にもね、静かにテキパキと動く必殺仕事人っぷりは爽やかだし、甲子太郎を斬ったほうがいいと進言するところも爽やかだし、会津戦争中に土方に刀投げるところも爽やかだし、細かいことごちゃごちゃ言わない凛とした佇まいが誰よりも武士!!!という感じで非常に好ましいです。近藤・土方・沖田・斎藤で芹沢鴨を斬る打ち合わせをしてる場面で、他3人がわちゃわちゃしてるのを一言も発さず黙って見てるのとか本当に斎藤って感じ。影が薄い。会津戦争のあたりもう少し描き込んでほしかったなという思いはあるけれど、充分かっこいい斎藤が見れたから満足です。

こんなにいいところたっぷりなのに、ツメの甘いところもあって残念でした。私が特に気になったのは二つ。

まず映画公式HPの人物相関図の欄。沖田総司は一番隊組長、永倉新八は二番隊組長、という具合に他の面々はちゃんと組長の肩書きになってるのに、斎藤だけ副長助勤なのはなんで? 斎藤も三番隊組長の肩書き持ってるのに。沖田だって永倉だってみんな副長助勤だし、どっちかに統一しようよ。

次に斎藤が御陵衛士に参加して新撰組を離れたことに対して、お雪さんが「斎藤さんは間者(スパイ)として御陵衛士に入った」と新撰組ゆかりのおなごたちの女子会で言ってたのだけど、それは絶対に言っちゃダメなやつです。ていうかなんでお雪さんがそんなこと知ってるの? 土方がそんな機密を漏らすとは思えないし、下手にバラすと斎藤の命が危ないのでやめてください。



さて、斎藤に限らず、全体的にキャストがとってもよかったと思います。ウーマン村本の山崎烝、最高だったな。饅頭饅頭饅頭饅頭饅頭小判小判小判小判小判のところ大好き。山田涼介の沖田総司は確かに美青年だった。汗の匂いがまったくしない。笑顔で「イヤです」とはっきり拒絶するところとか好き。あと土方の小姓である市村鉄之介役にSixTONESの森本慎太郎が抜擢されてましたが、最後の函館戦争の時しかセリフなくて笑った。ええじゃないかの行列を眺める時に姿だけは見えたけど、絶対に尺の都合で出番カットされたでしょ。

序盤、土方が行商で浪人みたいなやつらをボコボコにしたあと石田散薬を売りつけるという悪どい商売をしていた場面、るろ剣Beginningで長州藩士たちが稽古してた場所(剣心が抜刀術を披露するシーン)と同じな気がする。寺か何か。ところどころ見覚えのあるロケーションが出てきて、やっぱり時代劇のロケ地は限られるんだなと実感した。

山田杏奈は無敵の21歳の女の子 


どうも、こんにちは。

突然ですが、私が以前から唱えております21歳最強説を今一度お伝えしたいと思います。成人したことによる無敵感、ひとりで何でもできるような全能感、まだ擦れていないがゆえの無謀さ、目的のために脇目も振らずに突っ走れるひたむきさ、それらを持つピカピカに発光している時期がつまり21歳(概念)なのです。

最近、その無敵の時期だなと思うのがこちらの方。

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今ちょうど21歳の山田杏奈ちゃん。勝ち気で反抗的な女の子の役が多いイメージなのですが、賢くて芯があって大人への不信感たっぷりな一方で、まだ世間知らずの10代のピュアさも持ってる感じがある。何も怖くないし、体力は有り余ってるし、どこへでも行ける。まさにそんな感じ。アラサーから言わせてもらうと、無性にかわいくっていじめたくなるお顔をしている。うぅ〜ってほっぺたぐりぐりしたくなるお顔。私も反抗的な子供だったのでわかるぞわかるぞって先輩風吹かしたくなっちゃう。からかいたくなっちゃうの。そして世の中には生意気な若い女の子を屈服させて大人の男にはかなわないことを思い知らせたいっていうゴミみたいなおっさんがいたりするので、その毒牙にやられてしまわないか心配でもある(いらん老婆心)。

というわけで、山田杏奈ちゃんの無敵感がつまった映画が『ひらいて』(2021)です。

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綿矢りさの同名小説を映画化した作品。山田杏奈ちゃんが演じる主人公は好きな男の子が彼女持ちだと知って、その彼女と仲良くなって関係を持とうとするというエキセントリックな女の子です。その小悪魔っぷりが見事で恐ろしい。好きな男の子の視界に入れないくらいなら嫌われたほうがマシってことでわざと怒らせるような言動するのがもう痛々しくて見てられないんよ。挑発したくなるのはよくわかるけどそんなことしても絶対にいい方向には転がらないぞ…。

主人公の木村愛ちゃんは思いを寄せるクラスメイト・たとえくんの前で突然制服を脱ぎ始めたり、私のものにならないなら嫌いでいいとか殊勝なこと言ったくせにその直後には私のものになって!と正反対のことを言ってみたり、情緒があぶない。そしてこの「私のものになって」に対するたとえくんの返答もすごいんだ。たとえくんはもう主人公にうんざりしてるのに、彼女はちゃんとわからせないと引き下がらないタイプだと理解したのか、不毛な問答に付き合ってあげるの。「どうしたら木村さんのものになれる?」なんてやさしい声音で聞いて、「抱きしめてキスしてほしい」という無理難題を律儀に実行して、さらに訊ねるたとえくん。

たとえ「うれしい?」
愛「うれしい」
たとえ「うれしいなら態度で見せろよ」
愛(ぎこちない笑顔を見せる)
たとえ「貧しい笑顔だね」


「貧しい笑顔だね」


歩み寄りからの容赦ない突き放し。態度で見せろよってSっ気強めに言った時点ですでにおぉ…って感じだったのに「貧しい笑顔だね」でしんじゃった。貧しい笑顔という表現が出てくる男子高校生…。綿矢りさすげえ…。そしてそれをジャニーズJr.の子(たとえ役はHiHi Jetsの作間龍斗)に言わせる大人たちすげえ…。

話を戻します。

本作はそこそこきわどいシーンもあって、昨今インティマシーコーディネーターなるものが存在するとかいう話も聞くくらいラブシーンに対して厳格になってるから、20歳前後の女の子たちにこんなのやらせて大丈夫かなあとちょっと心配になったりする(いらん老婆心②)。山田杏奈ちゃんの無敵感はラブシーンなんかなくても十分出せるぞ。特にメインポスターにもなっているたとえに両頬を包まれて見つめ合うカットはとてもよかった。上目遣いの威力ハンパなくない? いじらしいのになんかちょっとムカつくんだよな。むすっとしてて不機嫌な態度なのに触ったらほろほろ崩れそうな脆さがあって、とにかくすごいよ。この雰囲気を出せるのは彼女しかいない。他に見たことがない。

ちなみにこれは文化祭の展示物である作り物の桜の木の下でのシーンなのですが、その桜の木がめちゃめちゃきれいなんすよ。文化祭で賞をもらって春まで展示されることになったとか劇中で言ってるけど、たかがクラスの出し物としての制作であれだけ完成度の高い物が作れたらそりゃあ表彰されるに違いない。実際は映画の美術さんたちが作った渾身の力作だろ。



それにしても山田杏奈ちゃんは不機嫌な役が多すぎるから、無邪気に天真爛漫に周りを翻弄する役とかも見てみたい。

手をあげる男なんてやめておきなよ 『G.I.ジェーン』


どうも、こんにちは。

概ね下馬評通りの受賞となった結果ウィル・スミスがすべての話題をかっさらっていった第94回アカデミー賞から約一ヶ月が経過しましたが、例の事件でにわかに注目を集めた映画がありますね。趣味の悪いジョークやそれを受けての平手打ちについてはさておき、本日の話題はその映画であります。



『G.I.ジェーン』(1997)

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興行収入がイマイチだったり、主演のデミ・ムーアの演技が酷評されたり、アメリカ国内では何かと残念な作品だと認識されているようですが、正直なんでそんな扱いされてるのかわからない。今回話題にのぼったことで初めて観てみたけど私はおもしろいと思ったよ。なお、映画評論家の町山智浩がこの作品を「海兵隊に入った女性の地獄の訓練と実戦」と言及しているのだけど、いやちょっと違うぞ。まったく違うわけじゃないけど微妙に違う。町山さん、本当に観ました?

というわけで簡単にあらすじを紹介しますと、デミ・ムーア演じる主人公ジョーダン・オニールはもともと海軍大尉の地位にいるエリート隊員です。データ戦略的な部署ですでに手腕を発揮していますが、「女性も男性と肩を並べて実戦で活躍できる」というある女性上院議員の主張および人気取りのために試験的に特殊部隊(アメリカ海軍特殊部隊SEALsをモデルとした架空の部隊)の入隊訓練を受ける女性隊員に選ばれます。抜擢といえば聞こえはいいけど、政治に利用される形になります。でも本人も実戦経験を積んで出世したいという思いがあって(過去に女性であることを理由に実戦参加を認めて貰えず悔しい思いをしている)、それはそれは決死の覚悟で訓練に挑むのです。

本作の特殊部隊のモデルとなっているSEALsというのは訓練の過酷さでは世界トップクラスで知られる精鋭部隊で、現実世界では2017年にやっと女性初のSEALs隊員が誕生しています。アメリカ軍は女性も活躍してるイメージだけど、海軍に限らず陸軍や空軍でも女性が実戦参加を許されるようになったのは実はここ数年の話なんだよね。だから『G.I.ジェーン』はわりと真面目なジェンダー問題とかも孕んでいて、1997年の作品なので今とは若干事情が異なる部分はあるんだけど、アメリカ軍はずっと昔からそういう問題に取り組んでたんだなって畏敬の念を抱きました。

ちなみにアカデミー賞での例の事件は作中で主人公が丸坊主にすることに端を発するわけですが、ジョーダンが丸坊主にするのは作品のストーリーとしては当然の流れでもあります。訓練に対するジョーダンの本気度を表すものなんだけど、隊員たちが波打ち際で腕立てを命じられた際、結んでいた髪が解けて海水でべちょべちょになって顔に張り付いて、すんげえ邪魔そうにしてる場面があるの。結び直そうとしたら「髪なんか気にしてんじゃねえ!」と指導教官にどつかれ、またしても顔に張り付く。おそらく男性の大半は髪が顔に張り付く不快さ、知らんだろう。あの経験をしたらそりゃあ坊主にしようと決心するよ。

私が常日頃から推している美形は坊主になっても美形説は女性の場合も当てはまるのだと本作のデミ・ムーアを見て確信に至りました。デミ・ムーアむっちゃきれい。序盤の長い御髪をまとめて制帽を被り、耳にはパールか何かのピアスをお召しになっているところもきれいですが、坊主でもなおその美しさには陰りがありません。

そしてウルゲイル教官役のヴィゴ・モーテンセンにとっても迫力あっていいのよな。曹長だからジョーダンよりも階級は下なのに、教官ということで立場が逆転しています。女だからといってまったく手加減せず、むしろ周りからも止められるくらい徹底的にしごきまくります。訓練後、ジョーダンがシャワーを浴びている時に教官がシャワー室に平然と入ってきて話し始める場面があるのだけど、女の裸なんてまるで気にもしていない感じが最高。ジョーダンもジョーダンで、お話し中すみませんが服を着てもいいですか的な感じの態度なのもいい。わたしはそういうのが好きなんよ。軍隊モノのちょっと歪な男女平等感、イイ。

さて、タイトルの『G.I.ジェーン』の意味について。日本語で「名無しの権兵衛」という言葉がありますが、そういった身元不明者のことをアメリカでは「ジョン・ドウ(女性ならジェーン・ドウ)」といい、どこにでもいるオーソドックスな名前の例としてジョン(ジェーン)が使われます。また、本作とよく似たタイトルの映画として『G.I.ジョー』シリーズがありますが、「G.I.」はアメリカ兵という意味らしいのでつまり『G.I.ジェーン』は名もなき女性アメリカ兵くらいの意味になるんだと思います。



訓練中にウルゲイル教官にボコられて顔がアザだらけになったジョーダン。後日バーですれ違った見知らぬ女性が「手をあげる男なんてやめておきなよ」とわかったような顔でまるで見当違いなアドバイスをしてくるのが作中で一番おもしろかったし、クリス・ロックにはウィル・スミスではなくジェイダ本人が「Suck my dick!」と叫んだら彼女の評価は爆上がりしたろうなと思う。

ゴッサムって日本じゃね? 『THE BATMAN -ザ・バットマン-』


どうも、こんにちは。

話題作をチェックするのが激遅、または完全にスルーを決め込むことでおなじみの当ブログは今日も元気に乗り遅れて参ります。



THE BATMAN -ザ・バットマン-(2022)

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幼い頃に両親を殺害されたブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は犯人への復讐を誓い、夜毎黒いマスクで顔を隠し“バットマン”として街を自警しています。バットマンとしての活動を始めて2年が過ぎた頃、ゴッサムシティの権力者を標的とした連続殺人事件が発生。リドラーと名乗る犯人は現場に必ず「なぞなぞ」を残し、警察やブルースを挑発します。



荘厳なアヴェ・マリアが響き渡り、過去のヒーロー映画にはなかったお上品さで幕を開ける『ザ・バットマン』。もともとバットマンって他のアメコミヒーローたちと違って特殊能力がないから人間ドラマの要素が強いと思うんだけど、今回のザバこと『ザ・バットマン』は要所要所でアヴェ・マリアが流れるため宗教色も強め。より一層現実世界に近いリアリティがあったなという印象です。三時間の長丁場、大真面目なミステリー作品のため、こいつが黒幕! と思わせてこいつが黒幕! からのこいつが真の黒幕! という込み入った物語。最終的にガチの黒幕は誰だったのか正直理解できていない。『TENET』(2020)よりむずかったわ。でもザバは何と言ってもキャスティングの勝利よ。

過去記事でもしつこいほど言ってますが、いい人やっても悪い人やっても両方似合うロバート・パティンソンがダークヒーローのバットマンをやるのはとても人間味があってよろしい。クリスチャン・ベイル版のバットマンと比べるとめちゃめちゃ不健康そうなんだけど、そりゃあ2年も夜型生活してたら体しぬよな。ウェイン産業にはほぼ関わらず昼間はろくすっぽ動いてなさそうだし、ずっと疲れた顔してるのも納得。バットスーツを身につけず素顔&ずぶ濡れでアイスバーグ・ラウンジに乗り込む時とか、元気なくてなんだか無性にかわいかった。

キャットウーマン(セリーナ)役のゾーイ・クラヴィッツはね、私はあのエキゾチックなお顔がもともと大好きなんよ。小柄ゆえにバットマンにキスする時は完全に顎が上向いてて絶対つらいだろうに、そう見えないどころかむしろセクシーで素敵なのすごい。あと華奢すぎて腰の細さエグい。

全世界で公開する大作でヴィランをポール・ダノに任せると決めた人には金一封さしあげたい。小綺麗で非力で弱そうなのに、何考えてるかわからなくて絶妙に気持ち悪い感じ(失礼)最高じゃない? 目の焦点合ってない感じもいい。すでに各所で話題になってますが、リドラーがアヴェ・マリアを高らかに歌い上げるのは名場面だよね。『プリズナーズ』(2013)での役とか、ちょっとコミュニケーションに難ありなキャラがポール・ダノは抜群にうまい。

ピーター・サースガードが汚職検事役(コルソン)で登場したのがさすがすぎてもう言うことない。初登場時はセリーナが装着してるコンタクト越しの暗視ゴーグルみたいな映像でしかもドラッグやって飛んでるからか、瞳孔開き気味で超気持ち悪かった。なお、ポール・ダノの醸し出す気持ち悪さは人との距離がうまく測れない感じで、ピーター・サースガードの醸す気持ち悪さは好色ジジイの感じで二者はまったく種類が違います。

そしてエンドクレジットにコリン・ファレルという名前を発見し、えっ誰役? と思った私はまんまと術中にハマっています。まさかペンギンだったとは。コリン・ファレルはペンギンっていうよりカメレオン。本当すごい。『ハウス・オブ・グッチ』(2021)のパオロ役のジャレッド・レトもすごかったし特殊メイクってなんでもできるね。



さて、過去のバットマン映画と異なり、ザバは原作に近い要素としてブルースの名探偵の側面を強めに出しているそうですが、名探偵と言っていいのかどうかちょっと疑う。理由は大きくわけて二つあります。まず、なぞなぞに関しては字幕じゃよくわかんない。言葉遊びを翻訳するのは本当に難しいし、まして字数制限なんかあったらまともに訳せないと思う。吹替を観たほうがもう少し理解できそう。予告映像にもある「黒くて青くて死んでるものってなーんだ?」ってセリフとか、私はもう「ゾウはロバでもアルパカなキリンってパーンダ?」しか頭に浮かんでこなかった。

そんなわけで、リドラーからコルソンに出題されるなぞなぞにバットマンが割り込んで爆速で答える場面、コントみたいでおもしろかった。越後製菓に張り合えそうな早押しなんなん? ブルースがなぞなぞに鬼強いのはぼっち属性ゆえなの? だからリドラーと通じ合ってるの?

次に二つ目の理由。「俺は復讐だ」とか自称している通り、ザバのブルースは理性を捨て去ってるのね。己のエネルギーを復讐に全振り。謎解きジャンキー。しかもドラえもんのひみつ道具に頼りきりなのび太よろしく、バットスーツを始めとする科学技術を詰め込んだ様々なアイテムを駆使し、本人はまるで危険を顧みず死地に突っ込んでいく。だってなぞなぞに夢中になるあまり、コルソンの首輪爆弾から一ミリも逃げようとせず結果ゼロ距離で爆発をまともに食らうの正気じゃないでしょ。いくらバットスーツが高性能でも指の一、二本くらいはなくなると思うんだが、少し気を失っていた程度で済む。バットスーツは何製?



政治家、警察、検事など権力者たちがこぞって汚職にまみれ、街は爆破による堤防の決壊で水に沈む。なんか、ニュースで見たことありますよ。ゴッサムは日本じゃないですか? 日本にバットマンはいらっしゃいませんか?

ハンムラビ法典を実践する男 『キャッシュトラック』


どうも、こんにちは。

本日は世界一かっこいいハゲことジェイソン・ステイサムをピックアップ!



キャッシュトラック(2021)

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現金輸送を専門に請け負う警備会社フォルティコ・セキュリティ社に採用されたパトリック・ヒル、通称“H”(ジェイソン・ステイサム)は、ある日、トラックを襲った強盗を瞬時に撃退。それから間もなくして彼の乗るトラックが再び強盗に襲われると、犯人たちはHの顔を見るなり逃走してしまいます。周囲がHの正体を怪しむ中、アメリカで最も現金が動くブラック・フライデーにフォルティコ・セキュリティ社を狙う計画が進行していました。



冒頭の採用試験では車庫入れが雑すぎて積んであるダンボールをなぎ倒したり、射撃の精度がイマイチだったり、お世辞にも優秀とは言い難い内容でギリギリ合格したH。でもどう考えたってステイサムがそんな平々凡々の実力のわけがなくてワクワクする。まあ、あれだけ凄みきかせてて採用試験通りのパッとしない腕だったらそれはそれで笑えるんだけど。そんなわけでHの正体は徐々に明らかになるのですが、ひとつのシーンを異なるキャラクターの視点から何度も繰り返すガイ・リッチーお馴染みの手法はそのままに、本作は珍しくコメディ色が薄めで今までの作品とは一味違います。

重低音の効いた不穏なBGMが終始流れ続け、いつものガイ・リッチーのブラックコメディっぽい感じ、ちょっと軽薄な感じはなりを潜めています。原題が『Wrath of Man』ということで、メラメラと燃えるオープニングクレジットからすでに激シブ。直訳すると「男の怒り」「男の復讐」という具合だけど、『キャッシュトラック』ってかなり良い邦題つけたと思う。わかりやすくてスタイリッシュで、原題よりもよっぽど良いかもしんない。

屈強な男たちが防弾チョッキ着て拳銃を携帯する現金輸送警備会社、強盗に襲われるのは日常茶飯事、殺傷事件も起こりうるので高給取りだなんて仕事はさすがアメリカという感じよな。Hが強盗を瞬殺した後の事情聴取で「6人も殺してなぜ無傷なんだ?」とかFBIに訊かれてるけど、正当防衛とはいえ6人殺した人間が目の前にいてみんな平然としてることのほうがやばいだろう。下手したら過剰防衛なのでは? つくづくアメリカの治安の悪さというか、アメリカではこれが普通なのか、という社会の常識の違いを痛感する。退役軍人のセカンドキャリアも問題よな……。

さて、ガイ・リッチー×ジェイソン・ステイサムの黄金タッグに加え、スコット・イーストウッドが悪役で絡んでくるのも最高。焦点の合ってない、どこを見ているのかわからない若干斜視っぽい目つきが不気味で良い。もともと斜視っぽいのかな。演技でやってるならすごい。あとスコット・イーストウッドは声がいいのよな。低いわけじゃないけど威厳がある。そんでもって甘い。顔が写ってなくても声だけでわかる。



コメディ色は薄めと申し上げましたが、Hが特に狙いを定めることもなく雑に引き金を引いて雑魚敵の急所に命中、パタパタと倒れていくところとか、ジョシュ・ハートネット演じるデイヴがHに先輩風吹かしてたわりにいざ強盗に遭ったら取り乱しまくってるところとかはシュールで笑えます。

呪術界はヤバいよねって話 『呪術廻戦』


どうも、こんにちは。

遅ればせながら『呪術廻戦』にハマっているアラサーです。

あれは劇場版の公開がスタートする一ヶ月くらい前だったでしょうか。原作漫画に手をつけました。しかしその時は正直あまりピンと来ず、5巻までしか読みませんでした。漫画って戦闘シーンの動きがわかりづらいし、間も掴みづらい。おもしろいけど、いまいちテンポが合わない。そんな感じ。でもアニメって偉大だな。気まぐれにテレビアニメ1期を観始めたら何もかもがわかりやすくってエンディングがかわいくって止まらなくなっちゃって、6巻以降も読みましたとも! そして劇場版も観てきましたとも!

しかもテレビアニメ2期の制作決定が発表されて、その2期がおそらく呪術ファンに最も人気のある過去編(五条夏油の高専時代編)からスタートするもんだから、そりゃあ呪術フィーバーがとどまるところを知らないわけだ。にわかファンの私も例に漏れず過去編好きですもの。そしてその理由は、夏油の闇堕ちの理由がやるせなくて切なくてどうしようもないから。これに尽きる。てか呪術界ほんとヤバくね? って話。

そんなわけで本日の記事は『劇場版 呪術廻戦 0』(2021)に関してだけでなく、原作漫画18巻までの内容を含みます(なおジャンプは未読)。テレビアニメ派の方は盛大なネタバレを食らうことになると思いますのでご注意ください。


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夏油は悪役らしい悪役ではないとか、優しすぎるがゆえに闇堕ちしたとか、巷でも言われていますが本当にそう。シンプルに生き方が下手くそ。夏油はもともとは強者(術師)が弱者(非術師)を守るっていうヒーロー的思想だったけど、術師だってみんながみんな強くないことに高専2年〜3年で気づいてしまった。幼い美々子菜々子や未成年の高専生(特に灰原のケース)など、術師の中にも守られるべき人間がいるのにそれが蔑ろにされて、あまつさえ非術師のために犠牲になることが夏油には耐えられなかった。

そんな時に九十九さんから「呪霊を生むのは非術師」という情報を得て、呪霊が生まれなければ術師が消耗することもない! 非術師を皆殺しだ! となったわけですね。でも夏油の本意は「仲間(術師)を守りたい」ということだったはず。非術師を皆殺しにして術師だけの世界を作るのはあくまでも仲間を守るための手段のひとつに過ぎなかったのに、それしかないと思い込んでいつの間にか目的にすり替わっちゃった。

過去編の五条との別れの場面で「生き方は決めた」って言ってるけどさ、決めるの早すぎるんだよな。まだ10代ぞ? 自分のアイデンティティに悩むのも生き方に悩むのも思春期あるあるだし、君に偉そうなこと言ったけどやっぱ非術師を守るとかキビイわって五条に話しゃよかったのにそれができなかったのも五条が強くなってどんどん自分との距離が開いていってると感じてたからだろ。だから思春期に生き方を決めるなよ〜〜〜。

もしかしたら離反した時点では夏油本人も自分が本当にやりたいのは「仲間を守ること」だって気づいてなかったのかもしれん。きっと10年の間にどこかで自分のやり方が無謀だって気づいて、でも美々子菜々子救出の時に村人呪殺しちゃって高専追われてるからもう他の手段が取れなくなってんだよ。百鬼夜行はやけっぱち。だって本当に非術師を皆殺しにしたかったら、焦らずもっと時間かけて準備すればよかった。あの時点で行動を起こす必要はない。要はもう疲れちゃったんでしょ。終わりにしたかったんでしょ。達成できればそれはそれでよし、できなくても五条に殺してもらえる。楽になれる。

そんなわけで呪術キャラクターの中では夏油が断トツに生き方下手くそだけど、その次に下手くそなのは七海です。

灰原が死んだ後、七海は同級生がいないまま1人で残りの高専時代を過ごしたとか寂しすぎない? そりゃあ呪術師はクソだって思うよな。サラリーマンになろうと思うよな。でも結局やりがいを求めて呪術界に戻ってくるんだもん。不器用すぎるだろう。キャラデザはあんまり好きじゃないけど、生き方が下手くそすぎていとおしい。登場人物がばかすか死んでいくのジャンプマンガにしては珍しくて容赦なくておもしろいけど、七海が死んでしまったことだけは許せない。

一級の七海でさえ負傷は当たり前、運が悪けりゃ死ぬような危険な業界なのに、いくら人手不足とは言っても術師としてまだまだ未熟な高専生を彼らだけで任務に向かわせるの、どう考えても倫理的にヤバいんだよな。星漿体の護衛だって、五条夏油がどんなに強くても学生に任せていい任務ではない。天元様のご指名とか言ってるけど17巻の様子からして天元様は話の通じる人っぽいからいくらでも説得はできたと思う。少年院の任務も特級呪霊案件とわかってて一年生(二級1人、三級1人、等級なし1人)を送り込むの意味わからん。虎杖を始末するためとはいえ、伏黒と釘崎を巻き込むなよ。人手不足のくせに後進を育てる気ないんか?

七海が徹底して虎杖ら高専生を守ろうとするのは彼らがまだ庇護されるべき未成年だからだし、きっと夏油と七海は分かり合えたよ。術師が、特にまだ未成年の術師が無闇に傷つけられたり命を落としたりすることのない世界を2人は望んでいたはず。なんでお前ら傷舐め合わなかったんだよ。灰原の死で最もダメージ負ったのお前ら2人だろ。なんで寄りかかり合わなかったんだよ。ていうか常に死と隣り合わせの業界でカウンセラーみたいな人がいないのもヤバい。危険な任務に赴いて廃人になる術師いっぱいいそう。真希真依のように家庭に問題大ありのケースもあるわけだし、特に真依の精神状態は危険だったろ……。

五条がやろうとしてる改革は、現場で動く若い術師たちが力をつければ上層部に対抗できるようになる(上層部の意のままに操られることがなくなる)っていう上層部に逆らうようなやり方だけど、夏油や七海だったら高専生や若手の術師を大事に育てることが人手不足解消の近道、やがては呪術界の発展にも繋がりますよ、って上層部をうまく味方につけながら改革を進めるやり方もできたんじゃないのかなって思っちゃうね。どっちが優れたやり方とかじゃなくて、同時に二つの軸で並行してできたら最高だったのに。本当にお前ら下手くそだよ。夏油も七海も28(27)で死んでるじゃん。私も今ちょうどそんな歳だから余計に入り込んじゃう。



さて、劇場版の話を全然してなくて草なので乙骨について少々。「死んじゃダメだ死んじゃダメだ死んじゃダメだ」があまりにもシンジくんでマジかと思ったのはさておき、漫画読んだ時、ぶっちゃけ夏油弱くない? って思っちゃったんですよ。特級同士とはいえ、呪術学び始めて間もないルーキーの乙骨少年にやられちゃうのかよ、と。でもこれも先述したように、アニメになったおかげで戦闘シーンの動きがよくわかって、乙骨の成長速度がエグかったんだなって納得した。なんてったってその後、百鬼夜行から一年足らずで五条に次ぐ強さになってるくらいだもん。一年生の時は“乙骨”だったのに、二年生になって再登場したら“乙骨さん”て感じだもん。五条にも勝る呪力量、術式コピー、反転術式も使える(他人へのアウトプットも可能)とか絶対死なないじゃん。

だから、未だに腑に落ちないのは乙骨に対して夏油が発する「女誑しめ」だけ。夏油の性格なら絶対おもしろがると思う。どちらかというと性格的に女たらしの要素があるのは夏油のほうだしな。里香ちゃんにキスして制限解除なんて芸当されたら、五条の教え子がこんなにユニークだなんて〜、って夏油はうれしくなっちゃうと思う。あれ、そういう描写あったっけ? 私が見逃しただけ?





虎杖めっちゃいい男だなとか、五条チートすぎワロタとか、高専の寮の間取りが知りたいなとか、真希さんただの犯罪者じゃんとか、禪院家に天与呪縛のフィジカルギフテッドが頻発してるの絶対裏があるでしょとか、他にもいろいろ書きたいことがあるのですが、長くなるのでこれくらいにしておきます。機会があればまた。

どこよりも遅い『MONSTA X:THE DREAMING』レポ


どうも、こんにちは。

本日はKPOPドキュメンタリー作品のレポです。上映が始まってすぐに観に行ったものの記事にする機会を逸してしまい、しかし感想はメモしてあったしモネク好きを公言する者として言葉にせずにはおれん。人様に向けてというより己のための備忘録です。今更こんなものを書く人間は私を除いて他にいないであろう。



MONSTA X:THE DREAMING(2021)

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KPOPグループMONSTA Xの過去の舞台裏映像と、メンバーへのインタビューなどの制作ビハインド映像、そして映画のために新撮されたパフォーマンス映像を交えた構成でこれまでの活動を振り返ります。



本編が始まってまず最初に思ったこと。

爆音。

冒頭一発目の「GAMBLER」のパフォーマンス映像、サブウーファーが下から突き上げてくるの笑った。隣のシアターに響いてないか心配になるほど音でかい。鼓膜が耐えられるかちょっと不安になったけど一曲終わる頃にはもう慣れている自分にも笑った。これぞモネク。爆音で「GAMBLER」「Love Killa」「DRAMARAMA」が聴けただけでもお金払った甲斐があった。コロナ禍にあって思うようにファンと交流ができない状況で、なんとか楽しんでもらう方法はないかと考えた結果この映画を制作したとのこと。その言葉の通り、パフォーマンス映像が多めでモネクわかってるじゃん、となった。

モネクの曲はライブとなると途端に重低音がドゥンバキで音源とまったく別物になっていることが多々あるのですが、比較的メロウな曲調の「Secrets」にいたってもサビの重低音がゴリゴリに響いていてびっくりしました。だって音源じゃそんな音は聞こえないじゃないか。困ります。映画の中では披露されていませんが、「Secrets」と同じくヒョンウォン作詞作曲の「Nobody Else」がわたくし非常に好きでして、曲調がメロウな点は同じでありながらこれはもともと重低音も強めなので、ライブでやったら一体どうなるのだろうとわくわくして仕方ありません。次のワルツでやってくれ。

ちなみにアメリカでの活動を振り返るパートで絶対に「Play it cool」来るだろうと思って待ち構えていたのになかったの残念すぎる。なんで? 青木ヒョンは?



では次に制作ビハインド映像について。振付師のヒョンがメンバーそれぞれのデビュー頃のダンスについて話す場面がありました。軒並み褒めるコメントが多い中で「キヒョンは歌しかできなかった」とか言われてるメインボーカル、不憫だな。せめて一言でも歌を褒めてやれよ。彼は歌がすごいんだから。また不憫繋がりで、ムビチケ前売特典だったスマホ待受画像はメンバーそれぞれのバストアップ写真がコラージュされてたのですが、キヒョンだけ引きの全身写真で笑った。なんで? さすがすぎない? またチャンギュンについては「最年少だし端っこで縮こまっていて魅力を発揮できていなかった。ハグして守ってあげたくなる」と言われていてこれまたさすがだった。振付師さんたちとモンベベは同じ思考のようです。

一番おもしろかったのは、意見がぶつかった時、全員がそれぞれに自分が正しいって主張するから練習が長引くとか言われてたことですね。ただし間違いに気づくとすぐ謝るので潔くて後腐れないとのことなのですが、「潔い」と訳されてる部分はたぶん「포기가 빨라(諦めが早い)」って言ってて尚更おもしろい。映画の内容からは逸れるけど、それこそ「GAMBLER」の振付でもその論争あったよね。ジュホンのヴェスパーマティーニのパートの振付がキヒョンだけ少し違う問題。

自分大好きキヒョン「俺の振りが正しい。あいつらは練習に集中してなかった」

キヒョンに厳しいミニョク「は? お前が違うんだよ。振付師のヒョンに訊いたろか?」

振付師のヒョン「キヒョンが間違ってる」

執念深いミニョク「みなさん、キヒョンが間違ってます。誤解しないでください」

結果的にはキヒョンが間違っていたわけですが、途中でショヌもキヒョンと同じ振りで踊ってることが判明し、キヒョンが間違ってると思ったけどショヌも同じようにしてるからやっぱり正しいのかもしれないと思えてきた、とモンべべたちが言い出したのもおもしろすぎる。いつも自信満々のキヒョンはまったく信用がなくて、メインダンサーのショヌは無条件で信じてもらえてるの、ファンとモネクの関係性良すぎでしょ。その後キヒョンはちゃんと正しい振付で踊るようになっていて、さすが間違いに気づいたらすぐに謝るスタエックスさん。偉い。だがこれだけやいのやいのやってた問題をチャンギュンとショヌがばっさり行く。

冷静沈着チャンギュン「何がそんなに重要なんすか」
メインダンサーショヌ「ぶっちゃけ本人の個性とセンス。その程度の話」



では映画の話に戻りまして、近頃次々と筋トレに目覚めていくメンバーたちを尻目にグループ内で唯一筋トレしていないミニョクはヒョンウォンに代わりヒョロヒョロキャラとなりつつありますが、振付練習のシーンではやけに体格が良く見えたんですよね…。前腕とか結構しっかりしてて、筋トレせずとも標準装備でそれなりに筋肉はあるんだなって認識を改めた。そうだよね。確か公式で身長179センチ、体重65〜7キロくらいだったはずなので、全然お肉あるよね。ミニョクはスーツなどジャストサイズのものを着ると線の細さが際立って華奢に見えるしX脚気味なのも目立つ。逆にダボっとゆるめのものを着ていると体が大きく見えて男らしさが増すからミニョクにはゆるめのシルエットの衣装をたくさん着せてあげてほしい。練習着とかめちゃめちゃ好きです。



さて、推しに結婚を発表されるとショックなのは、自分の人生には推しがめちゃめちゃ関わってるのに推しの人生に自分は関われない現実を突きつけられるからだ、というのは確かブロガーのはあちゅうの言葉だったと記憶しています。まあ言わんとすることはわかるが私は違うと思う。推しがたくさん稼いで健やかな生活を送れるのは他でもないファンのおかげじゃないか。ファンが推しに落としたお金が推しやその家族の生活を支えている。実際、売り上げや興行成績が作品の評価に影響するのは事実なので、私は好きな作品や好きなアーティストを応援するつもりでお金を払っている。いつもそういう気持ちでいる。

だから私はもともとアイドルとファンの関係を決して悲観してはいなかったのですが、この映画を観ていたらモネクとモンべべにはもっと深い結びつきがあるような気がしました。モネクの音楽にかける情熱やモンベベに対する愛情が並大抵のものではなくて、もし彼らがいつか結婚したとしても、音楽やモンベベへの大きな愛が奥さんや子供に向くことはきっとないだろうと思ったんですよね。もちろん家族は家族で大切にするだろうし絶対にそうあってほしいけど、語弊を恐れずに言うと彼らは仕事人間だから、仕事(音楽・モンベベ)に向けられるエネルギーが家族に向けられるそれを上回ることはないんじゃないか、と。

彼女や奥さんには決して向けられることのない愛情をモンベベは受けてるんだよ。それってすごくないか。逆に彼女や奥さんの立場からしたら、ファンが嫉ましいとさえ感じるかもしれない。だから大丈夫。例え彼らに熱愛報道が出ても、結婚発表があっても、そんなに悲しむことはない。モンべべが彼らを思う気持ちと同じくらい、彼らもモンべべのことを考えている。私たちはめちゃめちゃ彼らの人生に関わってる。この映画がその証拠だと思う。





最後に。誰の言葉だったか忘れたけど、「デビュー初期の何枚かのアルバムはMONSTA Xらしさがあまりなかった」と言ってたのは衝撃だった。私がいっちゃん好きなシンソッキからのHEROは、彼らとしては納得のいく楽曲ではなかったと? モンベベ歴7年目にして初めて知る。ちょっとショックである。